世界の潮流と日韓:伴大作の木漏れ日(3/3 ページ)
ICTをめぐる経済情勢を語るという命題をさかなに一献傾けようと秋の夜長を楽しんでいる。そんな中、先日韓国ソウルを訪れた。この10年の韓国の発展はまぶし過ぎるほどだ。
世界の潮流に取り残される日本の企業
家電、自動車の輸出は日本のお家芸という時代は今や過去の遺物になりつつあるのかもしれない。既にコンピュータの世界競争力は消滅した。サーバに関しても、市場が小型で廉価な製品へ移行しつつある動きを感じていたのだろうが、メインフレームにこだわるあまり、特にIA(インテル・アーキテクチャ)サーバでは日本のローカルベンダーに成り下がった。
確かに、デジタルカメラやコピー機など日本が世界市場を制圧している分野もある。また、「ガラパゴス現象」という世間で一般的にいわれている携帯電話に関しては、僕自身の意見として、それは市場の変化を先取りしたものであり、技術的な優位性を認めている。Nokiaやサムスン、LGなどは確かに台数は多いが、その大部分は一世代前のGSMであり、3Gではない。3Gの世界、中でもW-CDMAでは、日本のベンダーはNTTドコモのお陰もあり、限られたマーケットではあるが、それなりのシェアを確保してきた。
しかし、これも、Appleが「iPhone」を世界的にヒットさせ、日本の優位性は失われつつある。世界のテレビ市場を支配してきた日本企業も韓国のサムスンやLG、台湾のVisioにシェアを侵食され、今や昔日の影もない。
今や日本の輸出を支えているのは鉄鋼や機械、電機の部品産業だ。これでは日本の産業はますます空洞化し、やがて、米国のたどってきた道を歩むことになるのかもしれない。
将来の展望
米国は今やハリウッドを代表とする画像コンテンツ産業、シリコンバレーを中心とするソフトウェア産業、巨大な軍需産業、高度医療に必要な医薬品や医療器械、小麦やとうもろこしなどの食品、石油を代表とするエネルギー産業に支えられている。
翻って日本は果たしてどのような産業が将来の日本を支えていくのだろうか。米国のように世界を支配していると言い切れる産業は見当たらない。唯一、自動車産業だけが健闘しているだけで、ほかの産業はあてにはならない。果たして、わが国に将来を託せる産業は現れるのだろうか。
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