Webマーケティングの弱点を克服するウィジェット:浮上するもう1つの企業メディア(1/2 ページ)
従来のWebマーケティングの手法で消費者に情報を届けることが困難になりつつある。利用者のネット活用の形態が常に進化しているからだ。ここで、新たな情報配信を担うものとして、ウィジェットが台頭し始めている。
メールマガジンやSEO(検索エンジン最適化)などを使った従来型のWebマーケティングでは、企業が消費者に正しく情報を届けにくくなっている。消費者が、インターネット上に溢れる情報から必要なものを積極的に選別していることが大きい。企業はこれまでの成功に頼るだけでなく、自らの手で新たなWebマーケティングの手法を作りだしていかなければならない。
ウィジェットを駆使したWebマーケティングやプロモーションは、そんな現状に一石を投じる手法になり得る。ウィジェットが「個人と企業をつなぐメディア」としての特性を備えているからだ。既存のWebマーケティングとは一線を画す特性を持つ「ウィジェットマーケティング」を、成功事例を交えて紹介する。
ウィジェットが誕生したいきさつ
インターネットが定着してから約15年が経ち、インターネット上での企業のマーケティング活動を指すWebマーケティングという言葉も定着してきた。特に、自社のWebサイトや登録制のメールマガジンを使った「Pull(ユーザー主導)&Push(企業主導)」は、Webマーケティングの代表的な手法となっている。
ただし、インターネットの世界では日々技術革新が起き、それがネットマーケティングにも変化を及ぼしている。例えば2005年末に突如現れた「Web2.0」という概念は、Webマーケティングの新たな潮流をもたらした。
Web2.0は、ブログやSNSなどのCGM(ユーザー参加型メディア)、Web上の情報を効果的に流通させるRSSやXML、検索エンジン経由で消費者と企業の出会いを演出するSEO(検索エンジン最適化)などが普及した。そしてウィジェットもまた、この技術革新の中で生まれた産物なのである。
これらの技術革新に共通するのは、技術やサービス面の普及が利用環境の拡大と利用者の開拓をもたらしたことだ。これは技術革新とともに生まれる進化の1つであり、Webマーケティングにおける「常識」を覆した。
1.CGMの接触頻度が着実に向上
日本広告主協会・ウェブ広告研究会の調査結果によると、2006〜2007年にかけて、ブログやSNSなどのCGMのページビューは2倍に増えた。家庭にあるPCからインターネットを利用する総時間のうち、25%程度がCGMの閲覧時間に当たることも分かった。これは、個人同士が情報を共有する生活スタイルが、ブログやSNSを通じて定着してきたことを表している。
この生活スタイルの変化は、企業にとって脅威となった。自社サイトから発信した情報が、消費者には届きにくくなっていることが表面化してしまったからだ。
2.Webマーケティングの指標が「利用時間」に
Nielsen Onlineのインターネット利用動向調査「NetView」で興味深い調査結果が出てきた。日本における2008年4月のWebの総利用時間は前年同月比で18%増だが、1人当たりの月間平均ページビューは、4年前の2004年とほぼ同水準に低下しているのだ。
Webマーケティングを実施する企業は、消費者が情報に接触する頻度や時間を強く意識しないといけない。Webマーケティングの正確な成果は、もはやページビューだけでは測れなくなっている。
3.届かないメールマガジン
エイケア・システムズが2006年に発表した調査では、オプトインされたメールマガジンの6割以上が迷惑メールと誤判定されていることが明らかになった。
これは、インターネットサービスプロバイダーが提供するセキュリティプログラムやセキュリティーソフトによる迷惑メールフィルタが影響している。そのためメールマガジンを配信する企業は、こうした誤判定が起きていることに気付かない場合が多い。換言すると、企業が駆使する従来のWebマーケティングでは、消費者に情報を届けきれないということだ。
ウィジェットは個人とつながる企業メディア
企業は、消費者とインターネットの活用形態の変化に合わせて常に新たなWebマーケティングの手法を模索し、消費者とつながる「タッチポイント」を自ら構築していかなければならない。
その可能性を秘めているのが、ウィジェットである。SNSやブログと連携しやすく、PC端末にも常駐させられるため、密度の濃い情報を届けやすい。ウィジェットは企業と消費者(顧客)の橋渡しをするツールなのだ。
ウィジェットを介して、企業と消費者個人がつながる――。これはウィジェットが「個人とつながる企業メディア」であることにほかならない。この特性をWebマーケティングに転用する「ウィジェットマーケティング」は、効果的な情報伝達を実現できる新たな手法といえよう。
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