苦境を乗り越える「感謝力」の磨き方:ビジネスマンの不死身力(2/2 ページ)
感謝の気持ちが企業に浸透すれば、社員の仕事への取り組み方や顧客との接し方が変わる。「感謝力」を高めるために、経営層やリーダーがすべきことは何だろうか。
わたしはこうして社員に伝えた
わたしが以前プロジェクトチームのリーダーを務めていた時に、顧客からメンバーのスキル不足や自発性の欠如を指摘されたことがあった。以前は顧客の言い分を聞き、「もっとスキルを付けなさい」「自発的に行動しなさい」とメンバーにそのまま伝えていた。だがメンバーの多くが顧客からのクレームと受け取り、チーム全体の士気が下がっていった。このままでは顧客との信頼関係が崩れるのでは、と悩んでいた。
そこで、顧客からの意見をメンバーがうれしいと感じてもらうように、伝える方法を変えた。伝える内容の語尾に「うれしい」という言葉を付けてみたのだ。
例えば「もっとスキルをつけなさい」を「スキルを身につけたら、顧客はうれしいと思うよ」、「もっと自発的に行動しなさい」を「自発的に行動できたら、顧客はうれしいんじゃないかな」といった具合に変えてみた。欠点を指摘するのではなく、顧客から喜ばれることがうれしく、顧客と一緒に働けることがありがたい、と感じてもらうように、顧客からの言葉をかみ砕いて伝えたのである。 結果として、顧客の意見を前向きにとらえるメンバーが増え、現場の雰囲気が明るくなった。
また、メンバーが顧客のことを考えた上で仕事をするようになった。例えば、メンバーの一人はプレゼンテーション資料を作成する際、それまでは「資料のここを指摘されるから、事前に突っ込まれないようしよう」といった理由で膨大な資料を作っていた。だがうれしいという言葉を意識するようになったことで、「顧客がこの資料を見てどんな疑問を持つか? どんな情報があればうれしいのか?」と未来の視点から考えて資料を作るようになった。そのおかげで、メンバーは顧客だけでなく会社からの評価も勝ち取っていった。
メンバーの欠点の指摘を好むリーダーはいない。少し言い方を変える工夫をするだけで、顧客からの改善点の指摘を遠慮無く伝えることができ、結果としてメンバーのモチベーションも上げることができる。現場にも、感謝の気持ちが染みわたっていくだろう。
もっとも簡単に「感謝力」をつける方法
社員、メンバーの感謝力をより高める別の方法もある。それは経営層やリーダーであるあなた自身が率先して、メンバーに感謝の気持ちを伝えることだ。「うちの社員でいてくれてありがとう」「君がいてくれるおかけで、本当に助かるよ」など、普段心の中にある気持ちを、言葉に出して伝えよう。
経営者やリーダーであるあなたの一言は、社員やメンバーの一人一人がうれしい、ありがたいという喜びや感謝を感じる上で、とても大きな力を持つ。その力が社員に活力をもたらし、その気持ちに応えたいという意識を生じさせるのだ。結果として、顧客へのサービスが改善され、顧客から「ありがとう」という感謝の言葉が得られる。社員が顧客に本当の意味での感謝の気持ちを感じるのは、この瞬間だ。
まだしばらくは景気の低迷は続く。この苦境を乗り越える鍵は、メンバーが一丸となって顧客との信頼関係を作ることにある。それは、あなたが発した「メンバーへの感謝」という一言から始まるのだ。
著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)
テイクウェーブ代表。自動車メーカー、コンピュータ会社を経て、現在は、経営者・起業家・リーダー層を中心としたビジネスコーチング、人材教育に従事。システムエンジニア時代には、プロジェクトマネジメントにコーチングや神経言語学を生かし、組織活性化を実現。この経験を生かして、クライアントの夢が現実になるよう、コーチングの現場で日々奮闘している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。
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