ECサイト浮沈の鍵を握るのはチャットか:インターネット進化論2010
チャットの気軽さがECサイトの欠点を補う上で注目されている。トステムビバなどIT系以外の企業にも採用されている。
チャットが見直されているという。
楽天をはじめとしたECサイト運営企業が着々と売り上げを伸ばしていることから、消費者によるネット通販利用が進んでいることが分かる。だが、富士通総研による2009年の調査によると、消費者によるECサイトの利用回数は増えているものの、全体としての金額は微減。店舗における対面販売に比べて、ネット通販は商品を判断する上で不確定要素が大きいという欠点を解消しきれておらず、特に高額商品の購入に二の足を踏むユーザーは多い。そこで、急速に注目を浴びているのがチャットだ。
商品購入サイト上で疑問を持った消費者をチャットでサポート――。こうした仕組みを導入しているのは、Dellやマイクロソフト、日本HPなどのIT企業にとどまらず、トステムビバ、SBI損保、モノタロウなどあらゆる業種に広がりつつある。
中国では、ネット通販にチャットによる相談機能は不可欠といわれており、世界経済のけん引役としてのアジア市場開拓にもかかわってきそうだ。
チャットサポートシステムを提供するベンダーの1つが東京・港区のアイディーエス(IDS)だ。IDSはチャットによるオンラインサポートサービス「Live 800」を提供。実店舗のように親切な「ネット接客」を目指している。
IDSによると、チャットによるサポートの導入効果の1つは、見込み客の獲得だ。電話をするよりはアクセスしやすいというチャットの気軽さもあり、これまで接触できなかった消費者を獲得できる。すぐに購入につながらなくても、履歴は残るため次の購入を促すなどの施策が取れるのだ。店舗側からチャットを使って消費者に問い掛けられる機能も備えている。逆に、同じ商品ページの滞在時間が長いなどの情報をもとに、ECサイト側からその消費者にチャットで話しかけることも可能だ。
あるソフトウェア会社は、新規法人顧客獲得のためにチャットサポートを導入。Webサイトの1カ月のユニークユーザー数450に対して、チャットによる問い合わせ数が12件発生した。この分は新規獲得顧客と位置づけており、ここから実際にソフトウェア製品を受注したという。
建設関係の15万品目に上る工具を扱うトステムビバは、受注業務のスピード化にも成功した。従来は、問い合わせへの電子メールでの対応が中心だったが、チャットサポートを導入後は、顧客からの納期の問い合わせや商品の詳細情報などの質問にリアルタイムに回答できるようになった。顧客アンケートでも「返事を待つことなく、タイムリーに回答が聞ける」ことの満足度が高かった。
消費者および企業の両方に本格的に浸透しはじめたECサイトが持つ欠点を補完する意味で、チャットサポートは面白い存在になりそうだ。
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