分かりやすい「事務規定取扱要領システム」を実現し、将来の営業店ナビゲーション構想へ――静岡銀行:導入事例(2/2 ページ)
静岡を地盤とした堅実経営で、世界的にも高い評価を得ている静岡銀行。その静岡銀行が、業務の手続きをまとめた「規定」の見直しに着手したのは2007年。派遣社員やパートなど、業務の担い手が変化する中、専門用語が多く、分かりにくかった規定を見直すことが、喫緊の課題となっていた。
全部署を巻き込んだ規定執筆とシステム開発が同時並行で走る
「事務規定取扱要領システム」の開発は、2008年4月スタート。同時に、規定改訂のための執筆もスタートする。システムを「器」、規定を「中身」とすれば、器と中身の開発が同時並行で走ることになったのである。執筆に関して、静岡銀行 事務サポート部 ビジネスプロフェッショナル 大庭正壽氏は次のように語る。
「執筆には、本部のすべての部署がかかわるため、われわれの方で細かい執筆スケジュールを作成しました。また、規定の執筆のために、ベンダーに特別なツールを用意してもらいました。このツールに対しては、できるだけ制約が少なく、使い慣れたWordライクに書けるよう、多くの要望を出しました」(大庭氏)
規定の「見やすさ」「分かりやすさ」という観点でも、さまざまな工夫が行われた。
「従来の規定では、基本となる情報のほかに付加的な情報までが網羅的に含まれていたので、先頭から読まないと理解が難しいという問題がありました。これを解決するため、知らなくてもよい情報やプラスアルファの情報はできるだけ分離して本文を簡素化し、業務のフローごとに必要な情報を素早く確認できるように工夫しました」(大庭氏)
ただし、まさに「言うは易く行うは難し」である。規定の執筆にかかわった人数は120〜130名。原稿の品質を揃えるため執筆要項を作り、何度も説明会を開き、月に一回は進捗会議を開いてスケジュールを管理したという。
2009年7月、営業店事務取扱要領システムの開発は無事完了。全営業店で稼働を開始した。ただし、システムに載せる規定は段階的にリリースされ、すべての規定が新システムに移行するのは2010年7月が予定されている。
40%のボリューム削減と分かりやすい規定集を実現し、将来構想の基盤も整備
2009年7月より全営業店で稼働を開始した本システムだが、まだすべての規定が新しいシステムに移行したわけではない。従って、業務によっては旧システムの規定を参照している段階だが、それでも、新システムの効果は目に見えて現れていると、静岡銀行 事務サポート部 ビジネスリーダー 増田靖氏は言う。
「新システム稼働後、比較的規模の大きい幾つかの営業店で行員約300名にアンケートを実施しました。その結果を見ると、『検索がしやすい』『1つの画面ですべての情報が分かる』『本文がスッキリしていて分かりやすい』といった評価がなされています。また、規定が変更されると画面に『改訂中』という表示が出て、そこをクリックすると、どこが変わったのかが即座に確認できるようになったため、通達を読むのを忘れ、古い規定で業務を行ってしまうというミスもなくなりました」(増田氏)
A4で約1万ページあったボリュームも、約40%を削減。最終的にはA4換算で6000ページ程度になる予定だという。
また、今回の「営業店事務取扱要領システム」を基盤とした「営業店事務ナビゲーションプロジェクト」も、すでに立ち上がっている。このプロジェクトは、前述のように店舗の7割をロビーとし、正行員でなくてもスムーズに業務を行えるナビゲーションシステムの構築を目指すプロジェクトである。
IT活用を軸に地域の金融を支える理想の銀行の姿が、ここにはあるのではないだろうか。
関連記事
- 導入事例:透明で公正――国の施策に先んじアカウンタビリティを確立した、岐阜県の取り組み
多くの自治体が財政状況に苦しむ要因として、経済状況の悪化だけでなく、従来の会計制度の限界も挙げられる。そこで総務省を中心に、より厳密で透明性のある会計処理を実現する動きが本格化している。ところが、この改革を国に先んじて実現してしまった自治体があるという。それが岐阜県である。 - 導入事例:紙とデジタルの橋渡し――OCR処理で住民サービスを向上した世田谷区
東京23区で最も人口の多い世田谷区の住民税を処理するには、120万件にものぼる関係書類の入力作業が必要だ。そして、その最大の問題は、住民税を算出するための確定申告書類や報告書などの書式やサイズがまちまちで、手入力作業が基本となっていたこと。世田谷区は、これを高精度のOCRによってイメージ処理することで、大幅なコストダウンを実現。それに付随してサービス向上をも成し遂げたという。 - 導入事例:経理部門ではなく、社員みんなのために会計システムを作る――スカイネットアジア航空
スカイネットアジア航空は、2010年の羽田拡張を大きな飛躍の年と位置付け、拠点間のデータ連携や管理会計の充実を図るため会計システムを刷新。経理部門のためではなく“すべての社員が有効活用できること”を念頭に導入を進めたという。 - 「2009 逆風に立ち向かう企業」:東芝ソリューション:顧客のために、ものづくりの原点に返って体質改善を
この大不況を企業の体質改善の機会と捉え、正面からそれに取り組んだ企業こそが、次の局面を迎えることができると東芝ソリューションの梶川社長は語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.