ギフトカードの本格的な普及に向けた課題は?:アナリストの視点(2/2 ページ)
米国で急拡大したギフトカードサービスだが、日本での定着はまだこれからといったところだ。普及に向けてさまざまな課題が浮かび上がっている。
ギフトカードモールが起爆剤になるか
そうした中、注目を集めつつあるのがギフトカードモールである。ギフトカードモールとは、自社の店頭で他社ギフトカードを陳列して販売し、手数料を受け取るというビジネスモデルであり、POSを通過するまでカードにバリューが発生しないギフトカードならではの販売方法である。カード発行者にとっても、自社の商品を他社で販売することが可能になるため、ギフト需要の創出や集客効果などのメリットを享受できるサービスである。
2010年に入り、米国をはじめ海外で成功事例を持つギフトカードモール導入支援事業者を中心に、日本でのギフトカードモール事業が本格化した。コンビニエンスストアをはじめ、GMS、スーパーマーケットでギフトカードモールの導入が進みつつあり、2011年はさらに導入が進んでいくと見られている。また、大手のコンビニエンスストアなどの導入が進めば、ギフトカード自体の認知度が向上し、日本でもカジュアルギフトとしての需要が喚起されていくと期待されている。
しかし、ギフトカードモールが今後本格的に普及していくためには、まだいくつかの課題がある。まずは、魅力的なギフトカードがより多く陳列されていることが重要である。現状では、ギフトカードモールに陳列することに関して様子見のカード発行事業者が多い。その理由としては、ギフトカードモールは日本ではまだ実績のないサービスであり、ギフトカードをモールに陳列した際の販売予測が立たず、投資対効果が不明瞭であることが挙げられる。
ギフトカードは単なる決済手段ではなく、セールスプロモーションの手段でもあるという認識が重要である。ギフトカードモールに陳列することで、カード発行者は、新しいセールスプロモーション手段を獲得できる。ギフトカードモールが普及していくことで、ギフトカードは、単なる決済手段から、新しい商品としての特性を持つことになる。つまり、新しい自社の商品を他社の仕組みで流通させることが可能になるのである。
カード発行者は、どれだけ売れるかを考えるのではなく、新しい販売ツールを利用して売れるカードを発行していくことに目を向けるべきではないか。より魅力的なデザインやコンセプトのカードを発行し、ギフトカードモールに陳列することができれば、今までの販売促進では得られなかったメリットを享受できるであろう。
導入した小売店側が、ギフトカードモールに対してどの程度の売り場面積を割り当てるかも重要である。米国では、人通りが多くて目立つ場所にギフトカードモールを設置し、ギフトカードの認知度向上を図ることで普及拡大につなげていった。ギフトカードモールをただ導入して設置するだけでは大きな効果は得られない。顧客の出入りが多く、よりレジから近い場所に設置し、ギフトカードモールを積極的に顧客に訴求するような販売方法を採用することが肝要といえよう。
以上をまとめると、カード発行会社は、顧客が「使ってみたい」「プレゼントしてみたい」と思うような、またもらった人が喜んでいる姿が目に浮かぶようなギフトカードを作ることが不可欠だ。ギフトカードモール導入事業者については、より多くのカード発行会社と連携して、ギフトカードの品ぞろえを充実させること、小売店と連携して積極的に売り場面積を割いてもらえるかどうかが、ビジネスの成功の試金石となるだろう。
こうした課題を克服してギフトカードモールが本格的に普及すれば、ギフトカードの発行規模も堅調に拡大していくだろう。
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