マーケティングの出発点は、バリュープロポジション:バリュープロポジション戦略 50の作法
私たちのバリュープロポジションは何か? これを明確に、関係者全員が答えられることが、成功するマーケティング戦略の条件である。
連載「バリュープロポジション戦略 50の作法」について
本当の顧客中心主義満足とは何か?――。連載「バリュープロポジション戦略 50の作法」は、欧米発のバリュープロポジションというフレームワークをベースに、日本が昔から持っていた顧客本位の考え方を見直し、マーケティング戦略を構築・推進するための50の作法をまとめた書籍『バリュープロポジション戦略 50の作法』の一部を加筆・修正し、許可を得て掲載しています。
バリュープロポジションを絵に描くと、以下のようになります。
ポイントは3つです。
- ターゲット顧客を絞り込んだ上で、
- 顧客が望む価値を理解し、かつ、
- 競合他社がまねできない自社の価値を提供できること
成功しているビジネスは、このバリュープロポジションが明確です。明確なバリュープロポジションは徹底的に考え抜かれていますし、価値を作り、顧客に伝え、価値を届ける社内外の関係者全員に理解され、共有されています。
例えば、引退したシニアな富裕層に対する、街の電器屋さんのバリュープロポジションを、家電量販店と比較すると、次のようになります。
販売形態とユーザー | それぞれの価値と望むもの |
---|---|
家電量販店の価値 | 広い商域、大量廉価販売 |
引退したシニアな富裕層が望むこと | 複雑なデジタル家電を使用する際の場合のアフターサービス、適切な価格、利便性 |
街の電器屋さんの価値 | 地域密着、デジタル家電ライフを支援できる手厚いサポート力 |
実際、家電量販店よりも高価でも、地域に密着して高収益を上げている街の電器屋さんが多いのです。
バリュープロポジションは、そのままコミュニケーション戦略やチャネル戦略に展開することができます。対象顧客や訴求ポイントを絞り込んで定義しているからです。例えばコミュニケーション戦略では、シニア富裕層に手厚いサービスを訴求するメッセージを展開する、といったように戦略を展開していきます。
バリュープロポジションを起点に考えると、骨太な戦略が実現できるのです。
バリュープロポジション戦略 50の作法
著:永井孝尚
オルタナティブ出版
2011年3月30日
1260円(税込み)
マーケティング戦略を構築・推進するための50の作法を、バリュープロポジションという切り口で、さまざまなマーケティング理論を網羅しつつ、日本の事例を中心にまとめた、マーケティング担当者必読の書。
関連記事
- バリュープロポジション戦略 50の作法:顧客の立場、ビジネスの立場
私たちは、ビジネスパーソンであると同時に顧客でもある。だから顧客の立場を理解するのは、実は難しくない。それを理解するカギが、バリュープロポジションである。 - オルタナティブな生き方 永井孝尚さん:わが人生を悔いなく生きる
マーケティング、ビジネススキル、グローバルコミュニケーション、ライフワークなどをテーマに情報発信するブログ『永井孝尚のMM21』の筆者 永井孝尚さんに、その半生を聞いた。 - 朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力(1):GoogleやIBMの未来を方向付けた「顧客視点の事業定義」
マーケティング戦略を考える際には、まず自社の事業を理解することが出発点だ。その場合、製品中心ではなく、常に顧客志向で考えること。しかし、これがなかなか難しいのだ。「自分は現場でセールス経験が長いし、顧客志向が身についている」 と思っている久美の場合はどうだろうか? - 朝のカフェで鍛える 実践的マーケティング力(2):顧客第一主義の自社が価格の高いライバルに負ける理由
高い顧客満足を獲得するにはどうすればよいのか? 顧客からの要望にすべて対応すれば、最高の顧客満足を獲得できるのだろうか? 久美は、今まで知らなかったまったく違う方法を知ることになる。 - 朝のカフェで鍛える 実践的マーケティング力(3):「目立つ広告、売れない商品」に潜む欠落
「目立った広告で話題になれば勝ち」と考えているケースは多い。しかし、目立ったコマーシャルで話題になっても結局売れなかった商品は、誰でもいくつかすぐに思い出すのではないだろうか? なぜそのようなことが起こるのか、考えてみよう。 - 朝のカフェで鍛える 実践的マーケティング力(4):競合他社の出現は、売り上げ低迷の理由にならない
久美は問題と対策を整理しているが、なかなかまとまらない。どのように問題を分析して対策を立てればよいのだろうか?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.