【第3回】中国マーケットをいかに攻略するか:中堅・中小企業 逆境時の経営力(3/3 ページ)
利益を追い求めて中国市場に進出する日本企業は後を絶たない。一方で、その多くは道半ばにして撤退を余儀なくされている。果たしてどこに原因があるのだろうか。
事業運営上さらに留意すべきこと
最後に、中堅・中小企業が新興国マーケットでビジネスを進めるにあたり、以下の3つのポイントも留意したい。
(1)知的財産の保護
新興国では、知的財産権の概念が十分に確立しておらず、その法的保護を行う社会インフラも十分でない。そこで模倣品対策が重要なテーマとなる。もちろん模倣行為は犯罪なので、場合によっては地元当局などとともに毅然とした対応をすることが必要だが、一方で「模倣されるくらい現地での知名度が向上した証」といったあきらめの声も聞かれる。
(2)現地スタッフの人事労務管理
中国人は、明瞭な人事評価制度に基づき納得感ある評価を求めるとともに、将来どのようなキャリアアップが可能かという点を非常に重視するといわれている。よく中国人は長期間働いてくれずに、ころころと会社を変えるというが、その原因は、日系企業がステップアップ志向の強い中国人に対して明確な人事評価の仕組みを提示できていないことにある。
(3)品質管理
実際に営業するスタッフが中国人でも、顧客は日系企業と取引する以上、日本的な対応やサービスを期待している。顧客からの不満やクレームの多くが、期待のギャップによって生じている。「自分は対外営業で手一杯なので、品質管理は中国人スタッフに任せています」という日本人駐在員の話を聞くが、日本の品質レベルを維持することこそ日本人駐在員が現地にいる大きな役割なのである。
プロフィール 美谷昇一郎(みたに・しょういちろう)
株式会社日本総合研究所 総合研究部門
社会・産業デザイン事業部 グローバルマネジメントグループ マネジャー
大手都市銀行の中国駐在を経て、日本総合研究所の上海現地法人である日綜(上海)投資諮詢有限公司にて中国コンサルティングに従事。帰国後、現職。通算12年の中国駐在歴を生かして、中国投資に関するコンサルティングを幅広く手掛ける。
関連記事
- ITmedia エンタープライズ「中堅・中小企業」
- 中堅・中小企業 逆境時の経営力:【第2回】ICTサービスの可能性
経営資源の少ない中堅・中小企業において、コストを抑制できるICTサービスが注目されている。しかしながら、活用する上での課題も少なくない。 - 中堅・中小企業 逆境時の経営力:【第1回】経営戦略とIT
新連載「中堅・中小企業 逆境時の経営力」では、グローバル展開、組織論、IT戦略など、さまざまな切り口から中堅・中小企業の進むべき道を模索していく。 - 江口ともみのIT活用ビフォーアフター:ワインの好みもDB管理?――名門ゴルフ場のIT活用に至高のホスピタリティを見た
情報システムを活用し、ビジネスの成長に挑む中堅・中小企業――その実態に、タレントの江口ともみさんが迫る。今回訪問した企業は名門ゴルフ場「東急セブンハンドレッドクラブ」だ。 - Weekly Memo:中堅・中小企業におけるクラウド活用の勘所
ノークリサーチが先週発表した「2011年 中堅・中小企業におけるIT関連市場の展望」を基に、とくに中堅・中小企業におけるクラウド活用の勘所について考えてみたい。 - 中小企業の活力を高めるIT活用の潮流:業務を標準化しミスを減少、沖縄の印刷業が挑んだ経営改革とは
長引く不況により、印刷業界、中でも中小・零細企業は厳しいビジネス環境にさらされている。そうした状況下では、業務上の些細なミスが大きな売り上げ損失につながりかねない。業務プロセスをいかに改善するか――沖縄高速印刷でもこれが喫緊の課題であった。 - 「地方を元気に!」── 元ライブドア社長がクラウドで村おこし・町おこしの支援へ
ライブドアデパートの流れを汲む買う市が、ミニモールを低コストで開設・運営できるクラウドサービスをスタートさせる。初期費用は不要で、月額料金も成果報酬方式になるという。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.