アマゾン・クラウドに賭けるサーバーワークス:田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)
丸紅からの出向先のインターネット関連会社が清算。それを機に独立。約10年の苦節を乗り越えて大石社長がつかんだビジネスチャンスとは。
ITサービス料金の適正化に挑む
大石氏は「サービスのフェアプライス化」を中長期の目標に掲げる。AWSのサービス料金と内容は開示されており、誰もがその料金で使える。だが、料金を公表していないITサービス、内容を明確に表示していないITサービスが少なくない。個別対応、個別契約になってしまうと、ユーザーはそのITサービスが高いのか、適正なのか分からないことにもなる。
そこで、サーバーワークスはクラウド技術を使って、システム構築・運用に必要な機能の自動化に取り組むことにした。「できるところから自動化していけば、逆に自動化できない分野がはっきりしてくる」(大石氏)。実は、CloudWorksがその第一弾である。「ユーザーが100%オーダーするスタイルは少なくなり、ITサービスを組み合わせて、上手に使いこなすようになる」(同)。
そんな時代、ユーザーのIT部門はIT企業が提供するITサービスの内容と使い方を理解し、IT企業はどのITサービスとどのITサービスを組み合わせるのか、といったインテグレーション力が求められる。サーバーワークスはそこを目指すという。
大石氏は「導入したユーザー100%が喜んでくれた」と嬉しそうだ。コスト、性能、運用などの観点からサーバーワークスは「自信をもって提案」(同)しており、ユーザーから値引きを要求されたことがないという。逆に、「この料金でいいのか」(同)と言われることさえある。安定した収益の確保と技術者の効率的な配置が可能になったからでもある。
一期一会
「クラウドを専門にするIT企業が登場しているが、成功しているか」。中小受託ソフト開発会社の経営者はクラウドビジネスに懐疑的な見方をし、市場参入に躊躇する。本当の理由は、技術力がないからかもしれない。だから「従来からの請負案件が再び増えるのではないか」と期待するが、増えたとしても、コストの安い中国などアジアIT企業にいってしまうだろう。
受託ソフト開発の国内需要は激減する一方で、大手も人員削減を始めている。新しい技術を習得し、新しいことに挑戦しなければ、生き残れない時代になった。サーバーワークスはクラウドに賭けたのだ。1973年生まれの大石氏は「食べてみたら、美味しかった。受託ソフト開発で蓄積した技術も生かせる」と話す。年商10億円にも満たない中小IT企業の同社だが、ITサービスを開発し、適正な料金で提供する方向に進めば、ITサービス産業の構造転換を図れるとみている。
関連記事
- 田中克己の「ニッポンのIT企業」:IT産業に構造変革が起きる日
長年にわたって厳しい状況に直面する日本のIT産業。今後、国内外の市場においてどのように生き抜いていくべきか。 - 田中克己の「ニッポンのIT企業」:独自のITサービスで医療費の適正化に挑む広島のシステム会社
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.