スマホの操作はカラダで覚えて?:悲しき女子ヘルプデスク物語(3/3 ページ)
ついにスマホを手に入れたわたし。あ、あれ、でもうまく文字入力できない……。えーい、外付けキーボードは使えるのかしら?
とはいえ翌日の朝、スマホというオモチャを手に入れて、なんだかんだでいつもよりテンション高く出勤するわたし。
せっかくだから、この新しい武器(?)を自慢したくなるのが人情というもの。こんな時はなぜか、元上司Aさんのことを思い出す。思えばエアマウスを手に入れた時もそうだった。この日もしっかりAさんと目が合う。
わたし おはようございますうー。
ところが、Aさんのほうが一枚上手だったようだ。
Aさん おはよお。ほら、Androidケータイを買ったんだ。
Aさんに先を越されてしまったわたし。しかし、ここで負けてはいられない。
わたし 偶然ですね! わたしも昨日、スマホに機種変更したんですよ。
Aさん ちょうどいい。キミあてに電話してみていいかい? Android端末同士だとどんな音声になるかチェックしたいんだ。
さすがですね、Aさん。オタク……いやマニアは、そういうところが気になるんですね。わたしの返事など待たずに、早速電話をかけてくるAさん。当然、わたしのスマートフォンが反応する。くるっとAさんに背中を向けて「もしもし」と電話に出るわたし。Aさんは「おーつながったねー。もうちょっと何かしゃべってみて」などとリクエストしてくる。始業時間前とはいえ、2人で何やってんだか……。
しばらく、ばかばかしいシチュエーションでの会話が続く。満足したAさんは「じゃあ、次はこっちねー」とiPhoneを取り出し、電話してきた!
わたし Aさん、2台持ちですか!?
Aさん やっぱり両方とも研究したいと思ってね!
本業でもないのに「研究したい」んですね……。こうして、始業時間までの間、iPhoneとAndroid端末の音質やら機能やらを比べるAさんに、延々と付き合うこととなったわたし。自慢だけで終わるはずだったんだけどなあ。やっぱり、Aさん相手にフツーでは済まされない。
この日のヘルプデスク業務はのんびりしたものばかりで、緊急事態は起こらなかった。もっとも、そうそう大事件があるようじゃ困るんだけどね。担当していた資料作成に集中して時間の流れを忘れてしまい、我に返るとお昼休み。今日は何を食べようかなあ、などとぼんやりしていたら、Aさんの(小さな)叫び声が聞こえてきた。
Aさん そうかあ! つながらないじゃん!
こういう時のAさんには、間違っても近づいちゃいけない。また、危ないスイッチを押してしまうことになるからだ。分かっているのについ、反射的に声をかけてしまったわたし……。
わたし どうしたんですか!?
ああ、(危ないスイッチを)押しちゃったわたし……。
Aさん スマートフォンにBluetoothキーボードをつなげられるのは知っているよねえ?
わたし は、はい。
と、言っておこう。本当は、スマートフォン初心者のわたしが、そんなことを知っているわけがない。しかしiPhoneやAndroid端末はそもそも、Bluetoothに対応しているし、以前Aさんとワイヤレスキーボードの話をした記憶もある。だから、スマートフォンにBluetoothでつなげられるキーボードもあるんだろうな、なんて漠然と思いながらAさんのデスクを見ると、既に小さなキーボードが置いてあった。さすが、キーボードマニア。そんなものまで持っていますか。既に付いていけません。
Aさん 外出先からメールを返信したりメモを書いたりする時、キーボードがあると便利なんだよね? これはiPhoneで使うために買ったBluetoothキーボードなんだけど、Android端末では使えないみたいだ。
ああ。そうか。わたしは行き当たりばったりでAndroid端末を買ったからそこまで調べていなかったけれど、キーボードなどの周辺機器を利用するつもりなら、知っておかなければいけないことがある。
今さらだけどBluetoothは「無線を使って周辺装置を接続する規格」のこと。本来はケーブルで接続する必要のあるキーボードやマウス、デジカメ、携帯電話、プリンタなどをワイヤレスで接続しよう、というものだ。つまり、Bluetoothはいわばケーブルの代わりであり、その先にどんな周辺装置が接続されているかは、何か別の方法で識別することになる。
しかも、周辺装置ごとにデータのやりとりの決まりごと(いわゆるプロトコル)が違うのよね。そして、機器の識別やプロトコルなどをひとまとめに定義したものが「プロファイル」。代表的なプロファイルとしては、キーボードやマウスとのデータの送受信用であるHID(Human Interface Device)、携帯電話で音声をやりとりするHSP(Headset Profile)、HSPに発信・着信の機能を持たせた HFP (Hands-Free Profile)、ネットワークを実現するためのPAN(Personal Area Network Profile)などがある。
iPhoneの場合、キーボードやマウスは、WindowsやMac OSと同じようにHID(Human Interface Device)として認識する。だから、接続するのに必要なプロファイルもHIDだ。ところがLinuxやFreeBSDといったUNIX系OSを先祖に持つAndroidは、UNIXと同様に、シリアルポートに接続するキャラクタスペシャルデバイスとして認識する。
そのため、必要なプロトコルもシリアルポートに接続した機器を制御するためのSPP(Serial Port Profile)となるわけ。つまり、プロファイルが違うから、HIDモードしかサポートしていないキーボードは、Androidにはつなげられないってことなのよね。
Aさん、新しいキーボードがまた1台増えるのかなあ。今のところ、両方に対応している小型キーボードはこれくらいだしね。
その日の退社後、昨日に続いて家電量販店に足を運んだわたし。でも今度はキーボード売り場である。HIDを持つキーボードはたくさんあるけれど、SPPに対応しているキーボードはほとんど見当たらない。しかし今後は、徐々に増えていくことだろう。キーボードのことなんて、Android端末を買うときには思い付きもしなかった。とはいえ、あれだけダダダダダ〜ッ(入力)とダァァァァーッ(削除)を繰り返したわたしにとっては、スマートフォンでもキーボードを使えるのはうれしい話だ。
あ、これでまた、わたしも持っているキーボードが1つ増えてしまう……。このままではいずれ、Aさんと同類とみなされてしまうかも。“できるオンナ”になる前に“できあがってるオンナ”になってしまいそうだ……。
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