ビッグデータが追い風に データ分析のプロ集団を率いるブレインパッド:田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)
情報活用がますます盛んになる一方で、世の中に即戦力となるデータ解析人材がほとんどいないという問題に多くの企業が頭を抱える。
サービス商品の開発にも注力
総売り上げの約50%を占めるデータ分析事業は、売り上げの8割から9割をリピータから得ているという。「評判を聞いて、依頼にくる企業も増えている」(草野社長)。伸び率もリピータからだけで年15〜20%、それに新規顧客を加えると、年30%成長のビジネスになっている。2012年6月期の総売上高も前年度比28%増の17億3100万円、営業利益は同77%増の3億3500万円を見込んでいる。5、6年後に100億円を目指す計画も練る。
データ分析事業は基本的に労働集約型になる。人数と売り上げが比例するということだ。そこで、ブレインパッドはデータ分析の自動化、つまりサービス商品の開発に取り組んでいる。Webサイトの訪問者に合わせた商品提案や情報提供に役立つレコメンデーションツールや、Web広告の効果を最大化させるリスティング広告自動最適化ツールなどがある。2012年2月には、クラウド上にデータを蓄積、分析するPaaS(Platform as a Service)環境の提供も開始した。
こうしたサービス商品は粗利益率を高める一方、「データを蓄積、分析しても、どんな効用があるのか分からない」と活用を躊躇するユーザーに、どのようなリターンがあるのか試してもらえることにもなる。「分析事業はアンテナ」(草野社長)と位置付けて、最先端の技術を駆使する。そこから得たノウハウを活用し、自動化する分野を探し出していく。そのメニューを増やすことに力を注いでいる。
一期一会
1972年生まれの草野社長は、1997年に慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程を修了し、サン・マイクロシステムズ(現日本オラクルインフォメーションシステムズ)に入社、宣伝を担当する。2000年にインターネット接続サービスなどを展開するフリービットの設立に参画。「プロバイダ事業に従事するうちに、大量データを分析するチャンス」と思ったが、同社に手掛ける計画がなかったという。そこで、草野氏はデータマイニングに特化した事業の起業を決意した。
最近、大手ITベンダーもデータ分析に力を入れ始めており、「分析の専門家を数百人にする」とぶち上げている。が、草野社長は「容易に育てられるようなものではない」と疑問を呈する。「非構造化データを含めたビックデータ」の分析を提案するITベンダーもいるが、「構造化データでさえ、うまく活用できていない」とし、蓄えてきた既存データの分析を徹底的に行うべきだと提案する。創業9年目だが、データ分析に専門特化し、ノウハウを蓄積した自信があるからだろう。
このような専門特化型は、中小IT企業が目指す方向の一つである。業種・業務を絞り込んだパッケージソフトを開発するIT企業はこれまで数多くあった。今後、サービスに専門特化するIT企業が増えるだろう。そこに、新しいビジネスが生まれる。
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