NCのビジョンが花開く、CaaS構想で大企業市場にも切り込むNetSuite:SuiteWorld 2012 Report(2/2 ページ)
先週、SuiteWorld 2012でCommerce as a Service構想をぶち上げたNetSuiteのネルソンCEOに話を聞いた。同氏は1990年代半ば、OracleでNetwork Computerのマーケティングを統括していた。「NCのビジョンは素晴らしかった。ただ、15年早かっただけだ」と振り返る。
SAPはクラウド市場でリーダーになれない
もちろん、オンプレミス型ERPの巨人がSAPであることに変わりはないが、「SAPのクラウドサービス開発は2度にわたって失敗した。彼らを弁護するわけではないが、テクノロジーに破壊的な進化が起こったとき、前世代のリーダーが引き続きその座を守るのは難しい。それは歴史が教えている。市場がクラウドに移行する中、彼らはリーダーにはなれない」とネルソン氏は余裕を見せる。
「IBMのスマーターコマースも面白いが、複数のソフトウェアを組み合わせる、インテグレーションサービスありきだ。次々と変化する新しいトレンドに追従できるとは思えない」と返す刀でIBMもばっさり斬る。
NetSuiteによるCaaS構想の特徴は、デザインやユーザーインタフェースに依存せず、将来にわたって進化し続けるマルチチャネルを統合し、顧客レコードにひも付けてすべての情報を一元管理できることにある。
ネルソン氏は、「Appleのような顧客体験」という言葉をしばしば口にする。iPhoneやiPad、あるいは店舗という異なるタッチポイントでApp Storeにコンタクトしても顧客は一貫した整合性のある体験を得られるからだ。
「Appleは、別々のシステムをつなぎ合わせているわけではないだろう。バックエンドで情報を一元管理し、WebやiPhoneといったさまざまなタッチポイントで一貫した顧客体験が得られるようにしている。これこそが未来のアーキテクチャーだ」(ネルソン氏)
ネルソン氏の話を聞くうち、Oracleの総帥、ラリー・エリソンCEOがかつて発した、Microsoft批判、IBM批判のメッセージがよみがえってくる。それもそのはず、ネルソン氏は1990年代半ば、OracleでNetwork Computer(NC)のマーケティングを統括していた経験を持つ。
NCは、ネットワークに接続されたディスクレスの安価なセットトップボックスをオフィスや家庭のデバイスとして普及させようとした取り組み。OracleやSun Microsystemsは、ファットで管理性に問題を抱えたWindows PCを駆逐すべく精力的にNCを売り込んだが、敢えなく失敗に終わった。ネルソン氏は、「NCのビジョンは素晴らしかった。ただ、15年早過ぎた」と振り返る。
salesforce.comとNetSuiteというクラウドサービスベンダーの両雄は、いずれもエリソン氏が出資して事業をスタートさせたことはよく知られている。
「ラリーが読み誤ったとすれば、それはデバイス。NCは普及しなかったが、その代わり通信とコンピュータの進化が交差したスマートフォンが主要なデバイスとしてネットワークコンピューティングを開花させた」(ネルソン氏)
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