ユーザーの情報リテラシー教育を
さらに、適切なツールを選択する以上に重要なのは、ツールの操作方法を利用者に適切に教育することである。BIツールに関する調査を行うと必ず、ツールの操作性や利用者のスキルが課題として挙げられるが、これはきちんとした教育がされていないことが大部分の原因と考える。どんなに良い道具であっても使い方が分からなければ役に立たない。企業はトレーニングコースを用意し、さらに、利用者がトレーニングに参加できる環境を整えなければならない。
情報リテラシーを高めるためには、ツールの操作方法を覚え、統計学の知識を得ることは重要である。例えば、コンサルタント、アナリストが行う調査や分析の手法、論理的な問題のとらえ方、解決のための手法、さらにはコミュニケーションやプレゼンテーションの能力を高める必要がある。高い情報リテラシーを短期間で得ることは難しいが、企業は従業員が情報リテラシーを高めるための機会の場を普段の業務の中に組み込み、従業員は個々に情報リテラシーを高めるための努力を継続すべきである。
最後に、データ重視の企業風土であるが、これは国内企業に限ったことでなく、世界的に共通した課題と言える。しばしば外資系企業では数値で語ることが求められると言われるが、欧米企業であっても必ずしもデータ重視の企業風土を持っているわけではない。
カジノやホテル運営の大手であるHarrah’s EntertainmentのCEOで、元ハーバード・ビジネススクール教授であるゲイリー・ラブマン氏が、米バブソン大学の特別教授であるトーマス・H・ダベンポート氏の著書「Competing on Analytics: The New Science of Winning」(邦題「分析力を武器とする企業」、日経BP社)の序文に寄せた文章に、「分析重視への転換を妨げるのは、企業でごく普通に見られるような症状である」とある。つまり、事例となるような欧米の成功企業の多くは、データ活用をするための行動を実施しているのだ。
国内企業は、環境の変化に応じ、国内だけでなく海外の競合企業に勝ち、ビジネスを継続、発展させていくためには、グローバルに通用するITを装備し、使いこなさなければならない。そうした中で、情報系システムによるデータ活用がビジネス活性化の鍵となるのだ。
ビジネス環境もITも変化が激しく、必ずしも過去の常識が正しいとは限らない。従って、常にデータを更新し、分析しなければならない。昨今のITにおいて、性能を左右するのはハードウェアの性能向上によるところが大きいが、機能はソフトウェアが担っている。ビジネスを活性化させるためのIT活用とは、ライバルよりいかにうまくソフトウェアを使いこなすかが重要になるのではないだろうか。
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