ソーシャル時代のストーリー・マーケティング【後編】:新しいマーケティングの潮流
後編では、ソーシャル技術によってストーリー・マーケティングを進化させる具体的な手法などを紹介する。
ソーシャル技術のストーリー・マーケティングへの適用
前回は、消費者トレンドの進化とともに注目を集めてきたマーケティング手法、ストーリー・マーケティングを紹介するとともに、ソーシャル・テクノロジーがその重要な鍵を握ると述べた。
今回は、ソーシャル・テクノロジーを活用し、ストーリー・マーケティングを進化させる具体的な手法や適用技術とそのメリットについて見てみよう。
ソーシャル・ストーリー・マーケティングに適用される技術には、SNS、ブログ、タグ、RSSなどのすでに汎用的に活用されている基本的技術に加えて、コンテンツ・キュレーション・ツールやリスニング・プラットフォームといった昨今注目されている高度な技術が含まれる(図1)。
ソーシャル・ストーリー・マーケティングのメリットには、企業側のメリット、情報を発信するインフルエンサーにとってのメリット、情報を受け取る側のメリットがあるが、これらのどれか1つが欠落してもその効果を十分に発揮することはできない。ソーシャル・テクノロジーの魅力は利用の手軽さにあるため、インフルエンサーや消費者に大きな労力を強いるものであってはならない。彼らの生活や購買行動の中に、自然に溶け込ませるように浸透させることがポイントとなる。
ストーリー・マーケティング、とりわけソーシャル技術を活用したソーシャル・ストーリー・マーケティングは、現時点では未成熟な手法であり、成功例も豊富にあるわけではない。活用される技術も発展の途上にあり、日進月歩の進化を遂げている。一方で、多くの企業で実践されてきたマーケティング手法による効果は限界に達しており、マーケティング担当者は新機軸を求めている。企業は、マーケティング領域へのIT適用に関して、これまで以上に敏感にアンテナを張り巡らせることが求められる。
著者プロフィール
内山悟志(うちやま さとし)
株式会社アイ・ティ・アール(ITR) 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門、データクエスト・ジャパン株式会社のシニア・アナリストを経て、1994年、情報技術研究所(現ITR)を設立し代表取締役に就任。ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。現在は、IT戦略、IT投資、IT組織運営などの分野を専門とするアナリストとして活動。近著は「名前だけのITコンサルなんていらない」(翔泳社)、「日本版SOX法 IT統制実践法」(SRC)、そのほか寄稿記事、講演など多数。
関連記事
- 新しいマーケティングの潮流:ソーシャル時代のストーリー・マーケティング【前編】
共感を重視したストーリー・マーケティングの手法が、広告宣伝の世界において一定の効果を生み出している。一方で、ソーシャル・テクノロジーの台頭により、ストーリー・マーケティングに新たな展開の可能性が浮上してきている。 - アディダスのデジタルマーケティングの進化
世界的なスポーツブランドとして知られるアディダス。サッカー、野球、バスケットボール、ランニング、テニスなどを軸に、多くの人々に愛用される商品を提供する同社がどのようなマーケティングに取り組んでいるのか。アディダス ジャパンでブランドマーケティング デジタルマーケティングを担当する津毛氏が語った。 - 「脱・炎上マーケティング」できるソーシャル活用とは?――ループス斉藤氏に聞く
企業がソーシャルメディアを活用する上で、“炎上”のリスクは常に付きまとう。いかに炎上リスクを抑え、顧客との良好な関係を築いていくべきか。企業のソーシャルメディア活用支援を手掛ける、ループス・コミュニケーションズの斉藤徹氏に聞いた。 - ソーシャルマーケティング新時代:ソーシャルメディア活用の未来とその可能性
アジア新興国という市場に対するソーシャルメディアの活用を、事例や特性などを踏まえて検討してきた。果して今後のソーシャルメディアやソーシャルマーケティングはどのように変化していくのだろうか。 - ソーシャルメディアマーケティングの時代:ソーシャルメディアマーケティングの基本戦略
ソーシャルメディアマーケティングにおける最良の戦略は、企業が自らソーシャルメディア内に公式アカウントを設置して、身元を明確にしたうえで情報を発信することだ。今回は、企業の立場や規模に応じた戦略立案の方法とマーケティングの目的を明確にする指標を整理する。 - 特集ページ「IT基盤の新潮流」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.