驚異の4000%成長! タワーレコードのオンライン事業に何が起きたのか(2/2 ページ)
音楽CDなどを販売するタワーレコードが新たな顧客管理システムを構築。キャンペーンマネジメントを強化するなどして、売り上げの急増に結び付けている。
売り上げ成長は4000%
稼働から間もなく1年を迎える新たな顧客管理システム。既に成果は出ているのだろうか。直近の2013年8月の売り上げを見ると、全体の4割がUnicaにかかわるものだという。また、新システム導入以降、キャンペーン売り上げが4000%伸びているそうだ。
この間に実施した主なキャンペーンは、「バースデーキャンペーン」と「リーセンシーキャンペーン」の2つ。リーセンシーとは、最後の購買からの経過時間のこと。タワーレコードでは、顧客データを分析したことによって、30日以内に購買があると離反率が下がるということが判明。そこで30日間購買がない顧客、60日間購買がない顧客、90日間購買がない顧客というセグメントに分け、30日以上購買がなかった顧客に対して、割引クーポンなどのキャンペーンメールの送付を開始した。これによってフリークエンシー(特定期間内の累計購入回数)が上昇したのだという。
「IBMによると、Unicaを活用したキャンペーンのコンバージョンレートは通常1%ほどのようだが、タワーレコードでは4%に達した。システムと顧客の親和性の高さを物語っている」(前田氏)
こうした取り組みによって、2010年〜2011年にかけて50%だった離反率が、システムを刷新した2012年10月から今年7月までで40%に抑制されたという。「CRMの基本的な考え方は、顧客の維持、育成、獲得にある。顧客管理システムによって維持と育成が強化され、離反率低下による収益増につながった」と前田氏は強調する。
次に取り組むのは、よりきめ細やかなターゲティングだ。顧客を大きく9つのセグメントと4つのステータスに分け、例えば、価格に敏感な顧客向けだったり、クーポンに反応する顧客向けだったりと、より幅広いキャンペーン施策を展開できるようになる。
インバウンドマーケティングにも着手
今後、タワーレコードのオンライン事業はどのようなビジネス戦略を描いていくのか。現状のキャンペーンメールというアウトバウンドマーケティングにとどまらず、顧客の購買行動をトラッキングして関連商品を薦める「レコメンデーションシステム」や「リターゲティング広告」といったインバウンドマーケティングの準備も始めているという。
顧客データの活用もこれからの大きな取り組みだ。現在、オンラインでの購入者は顧客データを100%取ることができ、その活用が本格的に始まっているが、それを店舗のメンバーズ会員までに広げ、全タワーレコードの顧客へのマーケティングに活用していこうとしている。「まずはオンラインの顧客データを徹底的に分析して、そこで得たノウハウを店舗でのマーケティングなどに生かしていきたい」と前田氏は展望を語る。
「オムニチャネル化し、“オールタワーCRM”という視点で真のOne to Oneマーケティングを実現したい。これがタワーレコードの1つの到達点といえよう」(前田氏)
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