なぜファンは西武ドームに何度も詰めかけるのか:西武ライオンズのマーケティング改革(3/3 ページ)
2007年に観客動員数がプロ野球全球団で最下位になった埼玉西武ライオンズ。そこから“奇跡”のV字回復を遂げ、過去5年間でファンクラブ会員のチケット売り上げは約3倍に。果たしてその陰にはいかなる取り組みがあったのだろうか――。
営業部門はクラウドサービス採用で顧客管理を強化
実は、こうしたファンクラブ会員に対する顧客志向の取り組みは、西武ライオンズ球団職員の日常業務にも大きな影響を与えている。その表れの1つが、広告や年間シートなどを扱うB2B向け営業部門で顧客管理サービスを採用したことだ。「今までB2Cで培った仕事の進め方を、B2Bでも取り入れようとした。法人顧客を正しく理解して、ロイヤルカスタマーを育てていくべきだと考えた」と、西武ライオンズ 営業部 マネジャーの加藤大作氏は狙いを語る。
それ以前、営業部門では、Excelで顧客の売り上げ管理や営業活動管理、進ちょく管理、商談履歴管理などを行っていたが、管理するデータが複雑化し、整合性をとるために毎月のようにデータの突き合わせをする必要があった。従って、データを基にした次の営業アクションの仮説や検証が難しかったほか、顧客に対する活動履歴が正確に蓄積されていなかったため、営業担当者が代わることによる機会ロスが目立っていた。
そこで、サイボウズのクラウドサービス「kintone」を導入。散在するExcelデータをクラウド上に集約し、営業マン各人が共有できるようなシステム基盤を構築した。「営業マンによってITスキルがまちまちなので、従来はデータ入力やデータ抽出がうまく一人でできない者もいた。新たなシステムは操作性が容易で、データ抽出まで誰もが自分でできるようになった。業務の効率アップにつながっている」と加藤氏は強調する。
間もなく2014年のプロ野球シーズンが始まろうとしている。西武ライオンズは「顧客中心主義」を合い言葉に、ファンやスポンサー企業とともに一丸となってV奪還を目指していく。
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