「HANAでイノベーションのジレンマを克服」── SAPのハッソ会長が熱弁:SAPPHIRE NOW 2014 Orlando Report(2/2 ページ)
2日目のSAPPHIREでは、共同創設者のハッソ会長が登場、カンファレンスはハイライトを迎えた。今回は「イノベーションのジレンマ」で知られるハーバード大のクリステンセン教授をゲストに迎え、その熱弁にさらに拍車が掛かった。
「HANAは圧倒的なパフォーマンスを叩き出すため、データモデルをいちから作り換え、最低限で済ませることができる。事前にデータを集約しておく必要がないのだ。詳細データを基に必要なときに柔軟にレポートを作成し、“予測”と“シミュレーション”も可能となる」(プラットナー氏)
SAPではDB2で7.1テラバイトだったERPのデータ量がHANAに置き換えることで1.8テラバイトに削減でき、さらにHANAを前提として書き換えが進められているシンプルなERPでは0.8テラバイトまで小さくできるとみている。
「よりシンプルなERPは、HANA Enterprise Cloudを通じて順次提供され、エンドユーザーが戸惑うようなことはない。わたしは、R/3以降、すべての世代の製品に関わってきたが、これは大きな前進。持続的なイノベーションと破壊的なイノベーションの良い組み合わせと言っていい」とプラットナー氏は胸を張る。
HANAでビジネス変革に挑む先進企業
プラットナー氏は、いち早くHANAを活用し、「予測」と「シミュレーション」によってビジネスの変革に挑んでいる顧客企業をステージに招き上げた。
イリノイ州モリーンに本社を置くJohn Deereは、世界最大手の農機具メーカー。1837年創業の老舗だが、HANAでトラクターにイノベーションをもたらそうとしている。
「2050年には世界人口が90億人に達し、食料不足は深刻化する。農業の生産性を高めることが大きな課題となる」と話すのは、同社でグローバルインフォメーションテクノロジー担当ディレクターを務めるラリー・ブリュワー氏。トラクターのセンサーから送られてくるデータをHANAで分析し、故障の予兆を数カ月前につかみ、予防的な保守サービスに役立てているという。
「SAP Fioriの使いやすいユーザーインタフェースによって問題の根本原因も究明でき、顧客満足度向上につなげられている」とブリュワー氏。
食品の加工からデリバリーまでのトータルなコスト管理にHANAの分析パワーを活用しているは、米国の大手加工食品メーカー、ConAgra Foodsだ。
ネブラスカ州オマハの同社では、原材料の調達から加工、配送、広告、店頭での値付けに至るまで、HANAによるシミュレーションを通じて、市況や需要の変化に応じたトータルなコストの最適化を図っている。
インフォメーションテクノロジー担当副社長を務めるミンディ・サイモン氏は、「需要は? どこで何を買い付け、どの工場でどれだけ加工する? その際の利益は? HANAであれば、シミュレーションを幾度も繰り返し、精度を高めることができる。制約は人の頭の中だけにある」と話す。
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