“非デジタル企業”を救え! HANAと共存するOpenText、Adobe:SAPPHIRE NOW Orlando 2014 Report
年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW Orlando 2014」の最終日には、SAPのパートナー企業であるOpenTextおよびAdobeがキーノートに登壇。両社のキーワードは「デジタル化」だった。
デジタル化時代に企業は追いついているか?
独SAPがフロリダ州オーランドで開催する年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW Orlando 2014」は最終日を迎えた。6月5日(現地時間)早朝のキーノートでは、SAPのグローバルパートナー企業によるセッションが行われた。
まずステージに登場したのが、カナダに本社を置くOpenTextのマーク・バレンシアCEOだ。OpenTextは、文書や画像、映像、Webページなどさまざまなデジタルコンテンツを管理するECM(Enterprise Content Management)ベンダー。同社が提供するECMソリューションの特徴は、SAPの業務システムと、非構造化データを含めた多様なコンテンツとを連携させて統合管理できる点であり、以前からSAPとは強固なパートナーシップ関係にある。
講演の冒頭で、バレンシア氏は、デジタル化時代への変革がダイナミックに起きていることを強調。例えば、3Dプリンタの登場が従来の製造のあり方を変え、2020年には通信ネットワーク「4G LTE」の約1000倍の速度といわれる「5G」が主流になることで、情報のあり方が大きく変わるという。
また企業で働く社員の60%が既にインターネット時代の人間であるため、ソフトウェアはダウンロードし、インストールするものだととらえている。「彼らはクラウドユーザーであり、オンプレミスを理解していない。彼らにとってソフトウェアを実装するのに2年もかかるのは長過ぎる」とバレンシア氏は語る。
このようにデジタル化が進む中、「将来に向けて企業は準備できているのか」とバレンシア氏は聴衆に問い掛ける。
過去20年間、多くの企業はERPにIT投資してきた。その取り組みが功を奏し、業務の効率化を実現するとともに、それがコスト削減にもつながっていった。一方で、バレンシア氏によると、企業が持つデータのうち、約20%しかERPには格納されておらず、残りのデータ、つまり非構造化データはERPの外側にあるのだとする。バレンシア氏は「ERPによって構造データをモデリングできるように整備してきた。この経験を生かし、非構造化データについても対応していく必要がある」と話す。
そして、その中心的な役割を果たすのが、SAPの“Business Suites”に対する、OpenTextの“Information Suites”だという。「ERPによる財務、購買、営業、人的資源などのトランザクションからエンゲージメントまですべてをカバーする。SAPとOpenTextの両社で顧客のニーズを満たしていく」とバレンシア氏は力を込める。
その代表的な顧客の1社が、携帯電話事業者の米T-Mobileだ。同社はモバイルの解約率を抑制すべくビジネス再編プロジェクトを実施。そのためのITプラットフォームに、インメモリコンピューティング「SAP HANA」を基盤したCRM(顧客情報管理)やCEI(顧客対応)をクラウドサービス(HANA Enterprise Cloud)として採用し、OpenTextのソリューションを組み合わせている。既存の6つのレガシーシステムをCRMに集約し、25個のシャドーITアプリケーションを統合するなどして、このシステム基盤を9カ月で構築した。
HANAをデジタルマーケティングの基盤に
続いて登壇したのが、米Adobeのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャー、ブラッド・レンチャー氏だ。
昨今、デジタルマーケティング領域に注力する同社は、その包括的ソリューション「Adobe Marketing Cloud」を提供している。これは、「アナリティクス」「ソーシャルメディア管理」「Webコンテンツ管理」「ターゲティング」「広告管理&最適化」「キャンペーン管理」「ダイナミックタグ管理」というコンポーネントから成る。
今年3月にSAPと業務提携し、企業向けデジタルマーケティングおよびオムニチャネルソリューションのグローバルリセラー契約を締結した。これによって、Adobe Marketing Cloudを、HANAプラットフォームおよびeコマースプラットフォーム「hybris Commerce Suite」とともに提供することとなった。
このように、ソリューションレベルではマーケティングのデジタル化が進んでいるが、「企業の中ではIT部門とマーケティング部門の間に溝がある」とレンチャー氏は指摘する。例えば、マーケティング部門にとってIT部門はシステム実装が遅く、消費者ニーズを逃しているという。一方で、IT部門の主張は、有益なテクノロジーがあるのにエンタープライズシステムにマーケティング機能を統合する気がない、マーケティング部門はFacebookにきれいな写真をアップロードすることしか考えていないといった具合だ。
「こうした課題を解決するためにも、これまでばらばらだったデジタル、IT、マーケティングを統合した、デジタルマーケティングのためのプラットフォームが求められている」(レンチャー氏)
レンチャー氏によると、この新たなプラットフォームに必要な要素は、(1)接続性(2)消費者の一部分ではなく全体を把握すること(3)想像性、の3つだという。そして、これらを実現できるのは、AdobeとSAPなのだとする。
「Adobeのマーケティング技術をCRMやERPにつなげていき、すべてのタッチポイントに消費者志向を入れる。ここで不可欠なのがHANAを活用したインサイト分析であり、それによって初めて消費者が一人一人、正確に特定できるようになるのだ」(レンチャー氏)
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