データ活用に対するプライバシーへの懸念、消費者の心理は?
企業のデータ活用に対してプライバシー侵害を懸念する消費者の声が強まっているが、消費者の間にはどのような心理が働いているのだろうか。
企業で消費者のデータをマーケティング施策などに活用しようとする動きが注目を集める中、データの利用方法によっては消費者のプライバシーが思わぬ形で侵害されてしまうリスクが以前から指摘されている。このリスクに対する消費者の心理とはどのようなものか。
米SAS Instituteがこのほど発表した「パーソナライゼーションとプライバシーのバランスの適正化」と題する調査レポートによると、消費者が個人情報を共有することの意思と、企業に対する信頼との間には強力な相関関係があることが分かったという。
企業の個人情報利用に関する米国での調査からは、「懸念を抱いている」と回答した人の割合が、2013年の72%から2014年は77%に高まり、企業のプライバシーに対する取り組みに不安を感じる消費者が多いと判明した。
業種別では金融サービスに対して情報を共有しても良いとする消費者がほぼ4人に3人の割合でいた。これは、金融サービスを提供するために金融機関が重要な個人情報の入手することに対して、顧客が信頼をしていることを示したものになる。
通信関連サービスや小売、旅行・レジャー関連に対して、情報を共有しても良いとする消費者の割合は低くなったという。電話では提供企業が少ないことから、情報を共有しても良いとする割合がやや高いものの、小売や旅行ビジネスは消費者が必要に応じて他社に乗り換えたり、複数の企業とやり取りをしたりすることから、情報共有に同意する割合は低い。特に消費者の意識が厳しいのはエンターテインメント業界。消費者は企業と関係する期間が短く、取引額も少ないために、企業が取引履歴などの情報を必要とすることに対して、「分からない」という声が聞かれたという。
その一方で消費者は、企業に情報を提供して見返りを得られるのであれば、むしろ積極的になることも分かった。調査では69%が、企業に提供、共有する情報の範囲と個々の消費者に合わせて提供される恩恵が期待通りであれば、「趣味や興味に関する情報を提供する」と答えた。よりパーソナルなものや自分に関係あるものを得られるのであれば、「喜んで生年月日の情報を提供する」と回答した人も4分の3に上った。
調査結果について同社カスタマー・インテリジェンス担当グローバル・ディレクターのウィルソン・ラジ氏は、企業が消費者の信頼を得るために、消費者から提供されるデータが適切に管理されていることを消費者に保障し、個人情報が使用される用途を消費者が決められるオプションを用意することだと指摘する。
企業には個人情報の活用を増やしていく上で、情報利用とセキュリティに対する消費者の不安を払しょくしていく取り組みが求められる。そのためには、まず消費者の期待値を明確に理解し、内部的、外部的な作業を同時に進めて顧客との信頼関係を築いていく。
内部的な作業では顧客データの収集、利用、分析、配布に関するガイドラインを作り、コンプライアンスに則ったプロセスを構築して信頼を獲得する。外部的な作業では顧客とのコミュニケーションで顧客データの取り扱いと使用方法を明確に伝え、透明性と信頼性を高めることがポイントになるという。
CRM EssentialsのCRMアナリスト兼マネージング・パートナーのブレント・リアリー氏は、調査に対して「消費者の個人情報を安全に保護し、見返りとして消費者に価値を提供することが証明できれば、理性と感情の両面を勝ち取ることができます」とのコメントを寄せている。
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