衛星写真を巡る新旧企業たちの攻防:宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)
衛星によるリモートセンシング市場が活況を呈している。米国や日本の新旧企業が相次いで参入し、さまざまなアプローチで競い合っている。
伝統的なノウハウと最先端技術の組み合わせ
こうした動きに加えて、Skybox Imaging、米Planet Labs、米Omni Earthなどの創立数年以内の衛星ベンチャーによる参入も盛んになってきている。彼らは伝統的な宇宙開発のノウハウに加えて、高頻度(1日に数回)の観測を可能にする衛星連携技術、ITを活用した画像分析技術、他センサー情報との統合などを武器に、ゲームルールを変えようとしている。
Skybox Imagingについての詳細は過去記事を参照いただきたいが、同社が目指すのは“the right data at the right time, served in the right way”(適切なタイミングで適切なデータを正しい方法で提供する)だ。そのために、将来的には24機の小型衛星で構成するシステムによる高頻度な地球観測を目指しており、膨大な量の衛星画像を処理・分析するデータアナリティクスプラットフォームも保有する。他方で、今後は衛星の製造を外注する計画で、一部の衛星画像を非営利団体に無料提供する。このようにサプライチェーンやビジネスモデルも他社と比べて特徴的だ。
Omni Earthは18機から構成される衛星システムを計画していて、将来的には60ペタバイト/年の地球観測データ量を想定している。同社の特徴はパートナーシップだ。2014年、衛星設計・製造を米Dynetics、システムエンジニアリングを米Draper Laboratory、打ち上げサービスを米Spaceflightと提携した。また、同社は衛星画像解析を活用したソリューション開発を重視しており、今年8月に米IRISmapsを買収した。IRISmapsは地球観測画像とそのほかのデータを統合したビジネスソリューションを農業、林業、エネルギー、公的セクター向けにクラウドベースで提供する企業だ。高度な衛星インフラと高度なアプリケーション開発が1つになることで新しいイノベーションが生まれる可能性がある。
日本でもベンチャーの動きが活発に
日本でも同分野においてはさまざまな動きがある。東京大学発の超小型衛星ベンチャーであるアクセルスペースは、気象サイト「ウェザーニュース」と共同で北極海域の海氷観測を目的としたシステム「WNISAT−1」を製作したことで知られる。同社は東京大学と東京工業大学それぞれの学生の手で超小型衛星を製作、打ち上げる「CubeSatプロジェクト」を原点としており、低コスト開発が強みだ。同社の野尻悠太取締役は「大学発で小さく、低コストなものから始めてきた。衛星の作り方も、サプライチェーンも米国企業とは異なる」と語る。
今後は、「GRUS」と呼ばれる複数衛星による地球観測網構築(地上分解能は白黒2.5メートル、マルチスペクトル画像は5メートル)を計画しており、安価で即応性の高い地球観測画像の利活用実現に向けてまい進している。野尻氏は「地球観測画像の価格を従来の十分の一から百分の一に引き下げることを目指す」と語る。当面は3機の衛星を打ち上げ、徐々に衛星の数を増やしていく計画で、目下試作モデルを開発中だ。将来的には画像分析の領域も強化していくとのことだ。
また日本では、人工知能によるアプリ収益化支援のメタップスがスペースシフトと協力して超小型衛星を使ったビッグデータ解析システムの共同研究を開始することが発表された。このように新旧多くのプレイヤーが、解像度、撮影頻度、分析、コストなどさまざまなアプローチで市場と顧客開拓を進めているのが、世界の衛星リモートセンシング市場なのだ。
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