「エンタープライズクラウド」は、どこへ向かうのか?:クラウドエバンジェリスト4者対談(3/4 ページ)
エンタープライズ領域におけるクラウド利用がいよいよ本格的に普及段階に入った。その理由と背景は何か。自社は、導入をどう考えればよいか。主要ベンダーのクラウド関連エバンジェリストに、現状とその未来を分析してもらった。
クラウドサービスの差別化ポイントはどこにある?
── IaaSがコモディティ化していく一方で、他社との差別化のためにはPaaS、SaaSへの注力が重要か。
林氏 PaaSのユーザーが増えてきているため、私たちも特に注力していきたい分野だ。
当社のクラウドサービスで重視しているのは、オープン志向である。PaaS基盤としてはCloud Foundryを、IaaSにはCloudStackなどを活用しており、オープンソース系でエコシステムを展開していく。
北瀬氏 ベンダーとしては「選択の自由」を、ユーザーに提供することが重要だと思っている。
2014年現在のオンプレミスシステムでは、多くのユーザーがカスタムアプリケーションを利用しているだろう。クラウドに移行する場合は、同じアーキテクチャにして手間を減らすのか、クラウドのメリットを生かしたまったく新しいものにするのか、それも選択していくことになる。
一方で、パッケージソフトを有効活用しているユーザーは、SaaSも抵抗なく導入することができるだろう。また、迅速に開発できる環境を求めているのであれば、PaaSが役に立つ。
IBMは、IaaSとしてはSoftLayer、PaaSとしてはBluemixをそれぞれ提供しており、SaaSについても100種類以上のサービスを提供している。ユーザーは、これらのサービスを「IBM Cloud Marketplace」から、手軽に入手して利用することができる。
── オープン系の基盤が中心になると、パブリッククラウド同士の連携も考えられるが。
林氏 他社サービスとの連携はしやすくなっているが、実際に連携するケースは少ないと考えている。それよりも、データセンターやプライベートクラウドと連携して、異なるクラウドをつないで“いいとこ取り”をするハイブリッドクラウドの方が現実的だ。
── 国内にデータセンターがあることは、クラウドサービスを選定する上で重要な要素となるか。セキュリティが懸念材料となるか。
北瀬氏 金融機関などのユーザーは、法規制などの制約から、国内のデータセンターでないと導入できない場合が多い。
一方で、「何となく国内がよい」と考えているユーザーも多い。私たちの提案によって「海外でも大丈夫」と心を変えるケースは少なくない。
逆に、外資系企業などでは、自然災害が多い日本にはデータを置けないと判断するところもある。そうした観点から、当社のサービスは広くグローバルに展開しているため、海外展開を図るユーザーからの引き合いも強い。
林氏 NTT Comも通信キャリアとして、公共系のほか、海外展開を図る日本企業からの期待が大きい。他社との差別化要因として注力すべき分野だと捉えている。
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