「エンタープライズクラウド」は、どこへ向かうのか?:クラウドエバンジェリスト4者対談(4/4 ページ)
エンタープライズ領域におけるクラウド利用がいよいよ本格的に普及段階に入った。その理由と背景は何か。自社は、導入をどう考えればよいか。主要ベンダーのクラウド関連エバンジェリストに、現状とその未来を分析してもらった。
コスト、セキュリティ、運用性、ユーザーの懸念は解消されたのか?
── クラウド化に当たって、コスト面ばかりを重視したり、セキュリティの懸念でためらったり、導入するにしてもしないにしても、後ろ向きな企業が多いようだ。
林氏 NTTコムは、データセンターもクローズなネットワークも提供できる。セットで提案すると、セキュリティについてはあまり意識せずに済むようだ。むしろ、セキュアなクラウドとして評価していただいている。データセンターとの接続を無償で提供するコロケーション接続サービスも行っているので、価格面でも納得していただける。
当社の顧客は、全社的に取り組む大規模なエンタープライズユーザーが多い。当社のクラウドマイグレーションチームのサポートを受けて、じっくりと数年かけてクラウドへ移行する計画を立てて取り組んでいる。個別の条件や要件も多いため、一つひとつ解決していく必要があるためだ。
神谷氏 確かに数年前、IIJがクラウドサービスを始めたころは、セキュリティへの不安に対する声をよく聞いた。しかし最近では、そうした声は減ったように感じる。
そうした不安は、突き詰めると漠然としたものであったり、社内ポリシーに適さないだけであったりするためだ。昨年(2013年)、IIJ GIO利用顧客向けに実施したアンケート調査では、「自社で運用するより、IIJ GIOの方がセキュリティレベルは高い」と回答したユーザーが非常に多かった。
コストについては、以前ほど優先順位は高くないようだが、やはり効果を期待するユーザーは多い。一方で、真の意味でのクラウドのメリット、ビジネスへのインパクトを実感できているユーザーは少ないようだ。いずれは、この部分も改善されていくだろう。
北瀬氏 コスト面で、ぜひ考えていただきたいと思うのは、いわゆる「見えないコスト」の部分だ。
クラウドを活用することで運用負荷が軽減され、これまで管理に忙殺されていたITエンジニアが、より重要なビジネス戦略の検討や、新規ビジネスの開発などに携わることができるようになる。定量化は難しい。しかし、検討材料の一つとして考えてほしい。
セキュリティやコストのほかに、「運用性」や「事業継続性」についても懸念されることが多い。前者については、さまざまなサービスプロバイダが提供しているマネージドサービスを活用することで、運用レベルを上げることができる。事業継続性については、ぜひ既存のオンプレミスシステムのSLA(Service Level Agreement:サービス品質保証に関する数値と指標)を測っていただきたい。パブリッククラウドが劣るということはないはずだ。
真壁氏 セキュリティよりも、法規制やガバナンスに関して、これから動きが活発になっていくだろう。
私たちは、米国機関の盗聴疑惑などに見られるように「世界が平和でなくなってきている」と感じている。自国からデータを出すわけにはいかないという考えも増えてくるだろう。何を守るべきかをしっかりと考える必要がある。
コストはやはり重要だ。特に既存システムをクラウド化したいという背景には、間違いなくコスト削減がある。しかし、新規システムで新しいメリットが得られるのであれば、コスト以外で勝負をすることになる。米HPの事例では、開発したアプリケーションをすぐにパブリッククラウドへ展開できるスピード感が評価されている。
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