NECは新ブランドメッセージで勢いを取り戻せるか:Weekly Memo(2/2 ページ)
NECが社会ソリューション事業の拡大に向け、さまざまな施策を打ち出している。筆者は「C&Cへの原点回帰」と感じている。長らく売上高の減少が続いた同社だが、果たして勢いを取り戻すことができるだろうか。
新ブランドメッセージは「C&C」への原点回帰
「1977年、当時会長の小林宏治がコンピュータとコミュニケーションの融合を意味するC&Cを提唱した。C&Cが実現すれば、豊かな社会を構築できると考えたからだ。そのC&Cが今まさに1つの固まりとなって大きな力を発揮するようになってきた。私たちが培ってきたC&C技術を最大限に活用して、社会に大きな貢献をしてまいりたい」
遠藤社長は先に紹介した講演の冒頭で、NECグループビジョン2017を示しながら、こう語った。同氏はこれまでも講演や記者会見において、長期ビジョンや企業理念に触れることがあったが、今回の講演は冒頭で長期ビジョンを掲げ、途中で内容を説明した社会ソリューション事業の新ブランドメッセージを最後に繰り返して強調する形で締めくくった。
もちろん、事業に深く関連する話であることはこれまで説明してきた通りだが、筆者が感じたことを一言で表すと「原点回帰」だ。
NECが社会ソリューション事業のブランドメッセージを新たに打ち出したのは、「C&C」への原点回帰の姿勢を改めて強く示すためではないか。遠藤社長の講演にはそんな想いがにじみ出ていたように受け取れた。
だが、肝心なのはこれからだ。新ブランドメッセージを打ち出し、対象とする領域も定めた上で、これから同社が注力しなければならないのは、まさしく社会ソリューション事業の拡大だ。
振り返ってみると、NECは2002年に半導体事業を分社化してから、プラズマパネルや液晶パネルなどの採算の厳しい事業を切り離してきた。2011年には個人PC事業を持分法適用会社化し、最近ではスマートフォン事業からの撤退や、インターネット接続サービスのNECビッグローブの売却なども行った。この結果、かつては5兆4000億円を超えていた連結売上高が、2013年度(2014年3月期)には約3兆円にまで縮小した。
こうした規模縮小は、社会ソリューション事業を中核に据え、採算の厳しい事業を整理しながら財務体質の改善を図ってきた結果ともいえる。ただ、これから同社が注力すべきなのは、改めて売上規模を拡大していくことではないだろうか。というのは、売上拡大を図ることこそが企業の勢いを加速させるからである。
「C&Cが今まさに1つの固まりとなって大きな力を発揮するようになってきた」と言う遠藤社長の言葉通り、クラウドやビッグデータ活用といった新たなICTの領域は、まさしくコンピュータとコミュニケーションが融合した形だ。
ただ、グローバルではこの領域を狙う競合他社もすでに激しいバトルを繰り広げている。そこにNECも、これまでにも増して堂々と渡り合っていかなければならない。そのためにも、ぜひ売上拡大を図って勢いをつけてもらいたいものである。
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