IBM、占有区画で利用できるPaaS「Bluemix Dedicated」発表:Bluemixのシングルテナント対応版
日本IBMが、クラウドの次世代開発ツール/PaaS「Bluemix」に、シングルテナントで利用できるサービスを追加。顧客に占有区画を用意し、高いセキュリティ/コンプライアンスに対応したいと考える顧客のパブリッククラウドニーズに応える。
シングルテナントで使えるBluemixを追加
日本IBMは12月15日、シングルテナントで利用できる「IBM Bluemix Dedicated」の提供を始めると発表した。
「ハイブリッドクラウド」のニーズがエンタープライズ分野で急速に高まっている。主要の一部機能をクラウド環境へ移して効率化を図りつつ、すぐには移行できない既存のオンプレミス環境も併用して運用する形態だ。企業の既存資産や地理情報などのインターネット上の各種サービスを組み合わせたアプリケーションやサービスの迅速な開発を加速させる一方で、クラウド化は高いセキュリティの確保や運用管理の効率化が求められる。ここは、ただし顧客の各種規制やコンプライアンスへの基準を満たさなければ、とクラウド化の足かせがあった企業が多く抱える課題だ。
シングルテナント型のBluemix Dedicatedは、機材やソフトウェア、データベースなどを複数の顧客企業で共有する“マルチテナント”型の「IBM Bluemix」に対し、顧客ごとに「専用の環境を用意する」ことでこの需要に応えるサービスに仕立てた。「便利で効率がよいのは分かるが、自社の重要なデータを海外へ置くのは不安/コンプライアンスを満たせない」など、セキュリティ面でクラウド化の課題とする企業へ訴求するのが狙い。ハイブリッドクラウドへのステップとして用意した。
特長は、
- 専用区画/シングルテナントで提供する(他の要因に影響されるなど、マルチテナントで発生する可能性があるリスクを低減できる)
- 高いセキュリティを求める/コンプライアンスのある顧客に対応できる
- リソース計画が予測できる
- 客のニーズに応じた料金プランを用意する
の4点。Java Library/Ruby Sinatra/Ruby on Rails/Node.js/Bring your Ownのランタイムと128Gバイトメモリ、Cludantサービス領域1.6Tバイト、それぞれ50Gバイトのデータ/システムキャッシュを備えた専用区画の基本パックで400万円/月から(初期契約期間1年間)。オンプレ環境とのVPN接続環境、選択したデータセンターでの十分に冗長なBluemix環境、パブリック版と連携したAPIカタログ、リモートでの技術サポートなどのサービスを含め、契約期間内でのリソース増強(有料)/削減に加え、契約から3日程度で環境を提供できることを強みとする。
顧客には、パブリッククラウド上の専用区画へアクセス回線を含めて自社と同様の環境で利用でき、東京データセンター(2014年12月開設予定)を含めて設置するデータセンターを選択できる(ほか、北アメリカとロンドン)。専用区画を用意することで、各種の規制順守やコンプライアンス対応など、高度なセキュリティを必要とする顧客に適し、リソース計画が予測可能であることをメリットに、日本企業への訴求を加速させる。
「Bluemixは、SoftLayerを基盤にアプリの構築・管理・実行のためのオープンスタンダードを活用した新しいクラウドプラットフォーム(PaaS)。2014年7月のBluemixリリースから半年経たずにシングルテナント型を投入する理由は、なにより顧客のことを考え、急速に増えるニーズに応えるため。クラウドといってもデフォルトではそのままでは使えない。すべての顧客がおなじものを求めているかというと、やはりそれは違う。特に日本ではシステムの柔軟性が求められる。2014年は、2月のBluemixベータ版に始まり、6月の正式サービス発表、7月のAppleとの提携、10月〜11月のWatsonサービスの開始、Twitter/Microsoftとの提携、11月の起業家向け特別プログラムなど、顧客のニーズに沿って迅速に進化を遂げてきた。この迅速な対応とシングルテナント型サービスは、来年もBluemix/PaaS戦略の目玉にする」(日本IBM 専務執行役員ソフトウエア事業本部長のヴィヴェック・マハジャン氏)
「Bluemix対応のAPIは、サービスイン当初の約30から現在は約80と、驚異的な早さで追加している。これはパートナーが増えていることを示す値と実感している。専用環境で、とする顧客のニーズはサービスイン当初から高かった。普通なら3〜5年スパンで考える拡充スピードを半年まで早めたことになる。今までと同じスピードではできない/まったくついて行けなくなる、クラウド時代のビジネスとはこういうことであると思う」(日本IBM ソフトウェア事業本部クラウド・プラットフォーム・サービス事業部事業部長の高瀬正子氏)
あわせて、既存オンプレミス型システムのアプリ機能とデータをBluemixで使得るようにする「プライベートAPIカタログ」の提供と、企業のBluemixの活用や疑問点を支援する「エンタープライズBluemixセンター」をIBM東京ラボラトリー内に新設する。オープンスタンダードのコンテナサービス「Docker」への対応、セキュリティやコンプライアンスに関する導入・展開課題解決のサポートなど、Bluemixで提供するサービスに限定しない、より自由度の高い開発ができるよう「企業のプライベートクラウド化」を支援する施策を以後も矢継ぎ早に展開していく考えだ。
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