隣の席にいるような臨場感をLyncのWeb会議で ダンクソフト、テレワーク成功の秘けつ(1/2 ページ)
人手不足でテレワークの導入を検討する企業が増える中、最大のハードルといわれるのが“コミュニケーション”の問題だ。この課題を高価な機材を使うことなく、工夫と知恵で乗り越えたのがダンクソフト。手を伸ばせば届くような臨場感を、どうやって実現したのか。
「○○さん、ちょっといい?」「あ、大丈夫ですよ」「それじゃ、ちょっと打ち合わせしましょうか」――。そんな会社によくあるおなじみの光景が、ここ、ダンクソフトのオフィスでも繰り広げられている。
ほかの会社と違うのは、それぞれが遠く離れた場所におり、会話がディスプレイ越しに交わされているというところ。しかし、彼らの会話や会議は、まるでその場にいるようにスムーズだ。
離れているのに、距離を感じさせないコミュニケーションできるのはなぜなのか。その1つのヒントが、ダンクソフトのオフィスに設置された1台のモニターにある。そこには常に、何人かの社員がデスクに向かって仕事をしている姿が映っている。
これはMicrosoft Lyncのオンライン会議システムの画面。映っているのはそれぞれ別の場所でテレワークをしている社員たちだ。画面越しに呼びかけると、どんなに離れたところにいる相手でも、まるで“隣の席にいるかのように”、すぐ会話を始めることができるという。
多拠点の社員達が常につながっているワークスタイル
ICTによる中小企業の業務効率化支援やWebデザインを手がけるダンクソフトは、東京本社の他に、地方のサテライトオフィスや社員の自宅などで仕事ができる環境を整えている。
今回、取材したのも、同社の1拠点となっている浅草下町のギャラリーだ。古民家を改装したギャラリーは、いつもと異なる雰囲気で打ち合わせや会合ができる場所として活用されている。この日、ギャラリーのスクリーンには、東京本社のオフィス、2人の在宅勤務者の自宅(宇都宮と徳島)、徳島のシェアオフィスの4カ所の様子が映し出されていた。本社勤務の社員が臨時で在宅勤務をする場合など、日によってはもっとたくさんの場所とつながっていることもある。
さまざまな場所で働く社員たちは、勤務中は原則としてオンライン会議システムに接続し、互いの様子が見えるようにしている。社長の星野晃一郎氏は、「常につながった状態」であることが重要だと言う。なぜなら「いつもこの状態なら、相手が隣の部屋にいるような感覚で、思い立ったらすぐに声をかけられる」(星野氏)からだ。
確かに、インタビュー中にも、「休憩行ってきます」といった声が画面から聞こえてきたりして、相手がすぐそこにいるのと同じような感覚で声を掛け合っていることが分かる。しかし、このような方法でオンライン会議システムを使っている企業やユーザーはまだ少ない。
「オンライン会議システムというと一般的には『会議』や『電話』のイメージが先に立って、多くの企業が“何か用事があるときにしか”使いませんね。そうすると、そのつど接続するのが面倒になったり、いざ、つなごうとすると上手くいかなかったりして、不便なことも多いのです」
実験の繰り返しで、コミュニケーションを円滑にするノウハウを蓄積
それぞれの拠点が映った画面を見ると、よくあるオンライン会議の画面とは、やや雰囲気が異なる。その理由は、人物が映る角度だ。
通常のオンライン会議では、それぞれの参加者の顔は正面を向いた状態で映し出されていることが多い。しかしダンクソフトの場合、正面からではなく、横または斜め横あたりからとらえた画像が映っている。常にお互いを正面から見ていると疲れてしまうので、それを避けるためにあえてそうしているのだ。会話をするときはカメラの方を向くか、正面からのカメラに切り替える人もいるそうだ。
このように、多拠点間でのコミュニケーションを円滑に行うテクニックを、ダンクソフトはたくさん持っている。例えばスタッフが映っているスクリーンやモニターを設置するときの最適な高さを割り出したり、OutlookやKinectといった他のシステムと連携させるなど、毎日Lyncを使い続ける中でさまざまな実験を繰り返し、ノウハウを蓄積しているのだ。
「実は、この小さな工夫がとても重要。カメラの角度を変えたり、テレワーカーに仕事用ディスプレイのほかにスタッフの様子を把握するためのディスプレイを支給したり、そのディスプレイを目と同じ高さに設置したり……。こうした工夫の積み重ねが、その場にいるようなリアルなコミュニケーションにつながっているのです」(星野氏)
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