データが変える、クルマの未来とIoT(2/2 ページ)
すべてのモノがネットワークにつながる“IoT”時代、それは自動車も例外ではない。現在も通信機能を持つクルマ、いわゆる“コネクテッドカー”の普及が進みつつある。インターネットにつながる「未来のクルマ」とは、どのようなものなのだろうか。
自然言語で音声操作、宅配サービス、自動運転も
“IT化”と“サービス化”が進むとクルマはどうなるのか。レンクヴィスト氏は「センサーデータを生かせば、外の気温に合わせて自動で空調を調整したり、整備の時期が近づくと自動でユーザーに教えてくれたり。操作もタッチパネルではなく、安全性を重視して音声認識が主流になるだろう。車載コンピュータがクラウドにつながれば自然言語の理解も進む。iPhoneのSiriのようなイメージだ」と話す。
また、同社が行っている研究もこれからの自動車を示すヒントになりそうだ。2014年に発表した、クルマを宅配物の受け取り場所として利用できるサービス「Roam Delivery」は、ユーザーが商品の受け取り場所を自分のクルマに指定すると、1回だけトランクを開けられる「デジタルキー」が配送業者に送られるというシステムである。クルマと所有者のスマートフォンはつながっているので、配送が完了するとスマートフォンに通知が来る。
このほかにも、ネットワークに接続し、周辺の自動車との事故を避けるよう通知する自転車用ヘルメットを「International CES 2015」で発表したり、スウェーデンのイェーテボリ市内で一般のユーザーが100台の自動走行車を公道で走らせる「Drive Me」という実証実験プロジェクトを2017年に実施するべく研究を進めている。
とはいえ、自動車がネットワークにつながるとリスクも生まれる。例えばデータの送受信で個人情報が漏えいする可能性があるため、ボルボでは個人データの取り扱いについてオプトイン形式(許諾を取る形式)を採用し、匿名データに変換して取り扱うとしている。しかし、「将来的には、自動運転システムがハッキングされるといったリスクも出てくるため、今後は自動車のセキュリティも重視すべきだ」とレンクヴィスト氏は語る。
データが変える、クルマの未来
こうした未来の自動車技術を支えるのは大量の“データ”だ。多くのコンピュータが詰まったクルマから得られるデータは実にさまざまなものがある。走行情報のほか、アプリとして提供したサービスがどれだけの人に使われているか、どのデバイスと連携させているか、ユーザーがどうサービスを使っているか……これらのデータはユーザーが求めている情報や、ユーザーがどうクルマを使っているかを教えてくれる。
大量のデータを解析するためにボルボはテラデータのシステムを利用している。数百万台にものぼる車両から得られるデータと、業務システムのデータをどう結合して機能させるか――。これが同社の課題だったという。「数多くのアプリケーションとレガシーシステムで組まれた社内システムが複雑に絡み合い、情報共有も大変だった。そのため大容量のデータ基盤が必要になった」(レンクヴィスト氏)
車載センサー、ドライバーの挙動、組み立て工場の情報など、あらゆるデータを一元的に管理し、社内のしかるべき部門に深い洞察を提供する。ソーシャルやモバイル機器といった非構造化データも含めて、リアルタイムな分析が可能な点もサービスの進化に必要なポイントだという。
各種データの傾向は車種によって大きく異なり、そこで得られた知見は、製品開発部門やサービス開発部門にフィードバックされ、サービス品質の改善、つまり次世代の車両仕様や装備に生かされるという。「今後は車種開発にデータを生かしていく」と話すレンクヴィスト氏。ITとクルマ、両者の融合がさまざまなビジネスを一変させる日はもうすぐだ。
関連記事
- 「勝者は顧客」── 最良技術の統合で企業のビッグデータ活用を後押しするTeradata
ビックデータ分析のリーダーであるTeradataは、都内で「Teradata Universe Tokyo」を開催した。新共同社長に就任したばかりのウィマー氏は、ベストな技術や製品を組み合わせ、コンサルティングサービスとともに提供することで、企業がビッグデータから価値を引き出す取り組みを支援していくと話した。 - Volvo、Apple CarPlayの動画を公開
Volvoが、Appleの車載システムCarPlayを搭載したオンボードシステムの紹介動画を公開した。ダッシュボードのタッチディスプレイで、CarPlayとVolvoの空調などの機能をシームレスに切り替えられる。【動画あり】 - 新興企業Cruiseの半自動運転システム、2015年に発売へ
米新興企業Cruise Automationが、Audi A4/S4に搭載できる自動運転システムの予約受け付けを開始した。価格は1万ドルで、2015年にはカリフォルニア州ベイエリアのハイウェイを自動運転できる見込みだ。 - 日産自動車が始めた「ビッグデータビジネス」の狙い
日産は2013年、電気自動車「リーフ」の走行情報を外部企業向けに販売する事業をスタートした。同社にとって初となるビッグデータビジネスの狙いとは――。 - 自動運転車が日常的に走る交通環境とは? ボルボの「Drive Me」プロジェクト
Volvo Cars(ボルボ)は、同社の本社があるスウェーデン・ヨーテボリ市の公道を用いた自動運転車の実証実験プロジェクト「Drive Me」を開始した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.