“かつら”業界にも3D化の波――アデランスが全店舗にワークステーションを導入した理由:型取りが「3倍速」(2/2 ページ)
産業向けでも個人向けでも、3Dデータをやり取りする場面は徐々に増えてきているが、“かつら”業界にも3D化の波が来ている。頭の型を3Dデータ化する新システムを導入したアデランスは、3Dデータをスムーズに扱えるワークステーションを探していたという。
スタッフの教育を重視、コストに大きな効果
「通常、新システムを導入する期間は長くても半年くらいですが、今回の導入は1年以上の時間をかけています」(宮崎さん)というように、「Dell Precision T1700」を導入するにあたって、同社が最も気を付けたのは社員に対する教育だった。
「新たな業務を覚えるスピードは個人差があります。店舗のスタッフは必ずしもPCの操作に精通しているわけではありませんし、デジタル化に対して拒絶反応をする人もいるので、大人数の店舗スタッフを集め、1日や2日教育すれば何とかなるというものではありません」(宮崎さん)
そのため、同社では全国で一斉にワークステーションを導入するのではなく、全国141店舗を11ブロックに分け、それぞれの地域で教育の担当を設け、各店舗を回って指導した。指導後の約2カ月間を反復学習の期間とし、地域ごとに時期をずらして導入を進めていく方針を採っている。これは導入時にスタッフからの問い合わせが集中しないようにするという目的もある。
「製品に直結するシステムなので、稼働後にミスがないようにしなければいけません。そのため、教育の期間を長く取ることにしました。現在は東京を中心とした関東エリアでの導入が終わった段階で、今後関西や中国地方などの店舗に導入していきます。全店で稼働するのは2015年9月になる予定です」(宮崎さん)
新システムが稼働した店舗は、型取りの作業時間が3分の1程度に短縮され、海外拠点への輸送時間やコストも大幅に少なくなった。樹脂製のフィッターを海外に発送していた流通センターの負荷も軽減されたという。作業に関する問い合わせはあるが、電子化で作業がシンプルになったというスタッフの声も多いそうだ。全店舗でシステムを展開してから、半年ぐらい経ったタイミングで評価を行い、さらなる改善を行っていく。
「日本はモノ作りの国であるためか、外国に比較してオーダーメイドウィッグの需要は非常に高いです。私は入社してから25年ほど経ちますが、入社当初からウィッグの作り方は変わっていませんでした。一見地味に見えるかもしれませんが、型のデジタル化は何十年ぶりかの非常に大きな“改革”なんです」(宮崎さん)
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