なぜ、企業向けSNSは“売上アップ”や“ムダの削減”につながるのか:エンタープライズ・ソーシャルが働き方を変える(2/2 ページ)
個人の間ですでに浸透している“メールからSNSへの移行”が企業にも広がり始めている。なぜ今、エンタープライズ・ソーシャル(企業向けSNS)が注目されているのか、導入によるどんなメリットが期待できるのか。導入事例から検証する。
村井氏 例えば、エンタープライズ・ソーシャルツールの1つ、Beat Shuffleを利用しているアパレルメーカーでは、ショップスタッフが店舗で気づいたことを、読み手を意識することなく投稿しています。それが結果として情報やナレッジの共有につながっていて、接客のちょっとしたコツが他の店舗に広がって売上が向上する――ということも実際に起きています。
メールやメーリングリストに代表されるような、いわば「閉ざされた場」とは反対の「開かれた場」が社内には必要であり、それが社員の能力を伸ばすことや創造性の発揮につながると思うんです、また、エンタープライズ・ソーシャルを導入して、組織が可視化されるようになったという声もよく聞きます。
日野氏 エンタープライズ・ソーシャルを活用するようになると、他の部署や組織でどのような業務が行われているかが可視化されます。組織の活動が可視化され、他の部署が何に取り組んでいるかを知ることで、良いところを取り入れることもできます。業務が重複しているなら、役割分担したり棲み分けを考えたりすることでムダを省けます。
例えばエンタープライズ・ソーシャルツールのYammerを全社展開しているニフティは、組織の壁を取り払い、情報がきちんと組織内に循環するような取り組みを進めています。
“組織の可視化”が業務のムダをなくす手助けに
エンタープライズ・ソーシャルはまた、部署の中の可視化にも役立ちます。伊藤忠商事の事例では、部内の情報共有を「従来担当者」→「室長」→「部長」といったヒエラルキーに準じて行っていましたが、Yammerの導入後は担当者のコメントを部長が直接、確認できるようになり、「一次情報にアクセスできるようになった」と部長が喜んでいました。また部長から「いいね!」やコメントをもらうことが、担当者のモチベーションアップにもつながっているようです。
村井氏 Beat Shuffleを使っている企業の中では、プロジェクトの情報共有にコミュニティを活用するケースも増えています。他の部署で同じようなプロジェクトが走っていた場合、さまざまな知識を公開コミュニティに投稿しておけば、情報が共有され、経緯を自然に追うことができます。Yammerでの活用例のように、業務に重複があれば、委託や共同作業が行えます。
コミュニティ内の投稿そのものがナレッジになるのも利点の1つです。例えば、プロジェクトに新メンバーが参加することになった場合、プロジェクトの説明を行ってから業務を開始することが一般的ですが、新メンバーが増えると教える時間や労力が本業を圧迫することになりかねません。Beat Shuffleは、トピックのタイトルから情報を追うことができるので、新メンバーがプロジェクトに参加するまでの時間を短縮し、教育にかかる手間や労力を軽減できます。
日野氏 エンタープライズ・ソーシャルの活用を続けると、今までドキュメント化されることのなかった組織のナレッジ、いわゆる暗黙知が蓄積されていきます。組織にいる人々がどのようなノウハウや情報持ち、どんなことに関心を持っているのかが分かります。情報の中心には常に人がいて、個人が持っている情報やファイル、投稿を自分の業務に活用したり、再利用したりできます。
村井氏 我々は、情報やファイルの中心には常に投稿を通じた会話があると考えています。会話が蓄積されることで、結果として組織のナレッジが蓄積されていくという考え方です。
Beat Shuffleでは、エンタープライズ・ソーシャルの会話はフローとストックの2種類があると定義しています。雑談や報告、社内のニュースなどの日々行われている会話がフローの情報で、コミュニティのタイムラインを使って気軽に共有しています。
一方、決定事項や顧客情報といった、会話の中でもストックして後で見返すことが多いような情報には、トピック機能を使います。エンタープライズ・ソーシャルの強みであり弱点とも言われているフロー型の会話をうまく整理するために、Beat Shuffleではトピック機能を備えています。
次回はエンタープライズ・ソーシャルのメリットの1つ、“必要な情報を得るまでのスピードが格段に向上する”点が、企業にどんな価値をもたらすかを探る。
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