富士通が初公開した「新Web OS技術」は世界に広がるか:Weekly Memo(1/2 ページ)
富士通研究所が「IoT」の実現に向けて必要となり得る「新Web OS技術」を初公開した。発想はあの「Java」と同じだが、果たして世界に広げることができるか。
「ハイパーコネクテッド・クラウド」に向けた新技術
富士通研究所が4月2日、2015年度の研究開発戦略とともに、同社が開発中の17件の最新技術について説明した。その中で、同日に初公開された「さまざまなスマートフォンと周辺デバイスを簡単につなげるWeb OS技術」が非常に興味深かったので、その仕組みにおける注目点や普及の可能性について考察したい。
まずはこの新技術のキーワードである「ハイパーコネクテッド・クラウド」について、同社の佐相秀幸社長が研究開発戦略の話の中で次のように説明していたので紹介しておこう。
「今やサーバやストレージ、さまざまなアプリケーションがクラウドから利用できるようになってきている。そしてクラウドはこれから、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)環境を支えるICT基盤となる。さらにその先には、そうしたクラウド同士がアメーバのように連携し、ハイパーコネクテッド・クラウドを形成していく」
図1は、そうした変遷をクラウドの形状で示したものである。この図によると、2020年にはハイパーコネクテッド・クラウドの時代が訪れる。「富士通研究所もこのビジョンに沿ってさまざまな研究開発を進めている」と佐相氏は言う。
新Web OS技術は、まさにそのビジョンに沿って同社が戦略テーマとして開発を進めているものである。具体的には、スマートフォンとその周辺にある電子機器やセンサーなどの周辺デバイスを、スマートフォンのOSに依存することなく自動的に接続し、クラウドサービスを組み合わせて利用可能な状態にする技術である。
説明に立った同社ユビキタスシステム研究所の森田俊彦所長によると、「これまでスマートフォンやタブレットなどの端末で周辺デバイスを利用するためには、OSや周辺デバイスごとの専用アプリケーションが必要で、利用者はそのインストールを、開発者は周辺デバイスごとのアプリケーション開発が必要となり、利便性および開発コストの点で課題があった」と言う。
アプリケーションのOS依存性を低減する技術としては、すでに「HTML5」のようなWebアプリケーションを用いる方法がある。ところが「周辺デバイス用のデバイスドライバについては依然としてOSごとに開発し、アプリケーションと一体化して提供する必要があり、OS依存性は解消されていない。さらに、ブラウザ上でデスクトップのような環境を提供するWeb OS方式の実行環境においてもドライバの配置方法は確立されておらず、アプリケーションから周辺デバイスが利用しにくいのが現状だ」と森田氏は指摘する。
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