富士通が初公開した「新Web OS技術」は世界に広がるか:Weekly Memo(2/2 ページ)
富士通研究所が「IoT」の実現に向けて必要となり得る「新Web OS技術」を初公開した。発想はあの「Java」と同じだが、果たして世界に広げることができるか。
開発者をはじめとしたエコシステムづくりが普及のカギに
そこで同社では、OS上に独自のアプリケーション実行環境層を構築し、周辺デバイスを制御できるようにすることで、Webアプリケーションからクラウドサービスと周辺デバイスを接続できる技術の開発にめどをつけた。核となる技術は次の2つである。
1つは「Web型ドライバアーキテクチャ」。OSに依存せず周辺デバイスを利用できるようにするため、Webベースのアプリケーション層(Web層)とOSの汎用通信インタフェースをWebアプリケーション実行環境層でつなげるインターフェースのブリッジ制御技術である。これにより、ドライバをWeb層に配置することでドライバのOS依存性をなくすことができるとしている。
さらに、アプリケーションの独立性を高めるため、個々のドライバの違いを吸収する「デバイス抽象化API」を開発。これにより、例えば、同じ表示APIで、プリンタがあればプリンタに出力、ディスプレイがあればディスプレイに出力するなど、アプリケーションを変更することなく異なるデバイスを活用することが可能だという。
もう1つは「デバイス プラグ&プレイ技術」。周辺デバイスの接続を制御するための、デバイスの発見とドライバの動的な配信を行う「プラグ&プレイマネージャー」およびドライバの配信を制御する「デバイス管理」からなる。プラグ&プレイマネージャーによって、クラウドサービスと周辺デバイスを動的に素早くつなぐことができる一方、デバイス管理によって、Webアプリケーションが利用できるドライバだけを配信してクラウドサービスと周辺デバイスの接続を適切に管理できるようにするとしている。
同社ではこの新Web OS技術を2016年度中に実用化する計画。訪問看護における各種計測器との接続や、運送・宅配業務におけるタグリーダなどとの接続をはじめとして用途を広げていきたい考えだ。
森田氏は新技術の普及の可能性について、「開発者人口最大の標準的なWeb技術をモノの世界に拡張したことで、モノを含めた新しい情報流通によってさまざまな新サービスを創出できるのではないかと考えている」とポテンシャルの大きさを強調した。
この新技術の話を聞いて、筆者の頭に思い浮かんだのは、「OSに依存することなくアプリケーションを開発・実行できる」という同じ触れ込みで1995年に登場した「Java」だ。当時の米サン・マイクロシステムズ(後に米オラクルが買収)が世に出したものだが、同社はJavaをオープンなコミュニティのもとで多くの開発者に使ってもらうことに尽力した。これが奏効してJavaはその後グローバルスタンダードな技術になっていった。
富士通研究所の新Web OS技術もJavaに通じるポテンシャルがあるのではないか。ならば、世界中の開発者に担いでもらうことを考えるべきではないか。この点について森田氏に意見を求めたところ、「この新技術の基本的な考え方はJavaと同じだ。開発者をはじめとして新サービスを創出していくためのエコシステムが必要なことも十分に認識している」とのことだった。
Javaはインターネットの広がりと共に浸透した。ならば、新Web OS技術もIoTの広がりとともに“日本発”のグローバルスタンダードを目指してほしいものだ。富士通のダイナミックな挑戦に期待したい。
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