「お〜いお茶」伊藤園グループが急いだ“情報共有基盤とBCP”の必要性:もし「お〜いお茶」や「タリーズコーヒー」が飲めなくなったら……(2/2 ページ)
食の安全性から企業の存続価値をたどると、改めて企業のIT基盤や「事業継続計画」の重要性につながる。「お〜いお茶」や「タリーズコーヒー」ブランドを抱える伊藤園グループが「Office 365」でグループ間で統一した社内情報共有基盤の構築を急いだ理由とは。
対策と方法:SaaSでのコミュニケーション統一基盤へ刷新
グループ間のコミュニケーション基盤の統一で、さらなるイノベーションを起こす目標。そしてシステムの運用や維持にかかるコストを平準化でき、最新の環境を継続して使えること。セキュリティの基準もグローバルに準じており、データセンターの冗長化もなされている。海外拠点(特に中国)でも利用できる。
これらを考慮すると「SaaSでのクラウドサービスは当然の選択だった」(伊藤園の山口氏/同上)という。グループの要件を満たすソリューションとして採用したのが、パートナー 富士通マーケティングによるOffice 365の提案だった。
選定に至った決め手
- 中国でも問題なく使える
- 慣れているMicrosoft Officeとの親和性が高く、自然に使える
- パートナー、ベンダーの充実したサポートが受けられる
「機能の充実やグローバルでのサポート体制など含めた選考の中で、Office 365を選ぶ決め手となったのが、中国でもVPN接続で支障なく使えるということでした。さらに、慣れ親しんでいるMicrosoft Officeと親和性が高く、幅広く活用できること。そして、データセンターの監視やセキュリティパッチなどの適用がマイクロソフトによって行われ、可用性やセキュリティが担保されていること。富士通マーケティングが、弊社の業務内容をきちんと理解した上でサポートしてくれること。こうしたポイントが決定的な優位点となりました」(伊藤園 情報管理部システム運用課課長の青柳敏夫氏/同上)。
2013年8月に採用が決裁、同年9月に導入プロジェクトを開始。わずか3カ月後の2013年12月に伊藤園とタリーズコーヒー、約5500ユーザーのメールシステムとポータルサイトなどのグループ間情報共有の環境を、Exchange OnlineとSharePoint Onlineで統一できた。組織間、拠点間の認証基盤をシームレスに連携させる「Active Directory フェデレーション サービス(AD FS)」も実装し、シングルサインオン環境を整えた。統一基盤へは全国の伊藤園の拠点およびタリーズコーヒー各店舗(国内約500店、2015年4月現在)で、セキュアかつ快適にアクセスできるようにした。
効果と成果:グループに「一体感とスピード感」が AD FSやSharePointのさらなる活用も想定
認証基盤をAD FSで連携させ、両社対象ユーザー全員のメールアドレス管理もExchange Onlineで一元化。これだけで、これまでできなかったグループ内他社社員とコミュニケーションをとるまでの壁がスッと消えた。「日常は別の業務/別のシステムの中にあって、分かれていましたが、グループの一体感/連携性がより得られるようになりました」(伊藤園の山口氏/同上)。Exchange Onlineの古いメールを自動的にアーカイブに移動し、無制限に保持する「インプレース保持」機能により、コンプライアンス対策に必須となるメール管理の手間もなくなった。
さらなるグループ企業間の一体感/連携強化のため、SharePoint Onlineにも大きく期待する。今後、メールと掲示板に頼った一方通行のコミュニケーションから、ポータルを活用した双方向コミュニケーションを加速させるため、この活用をいっそう深める計画だ。
「SharePoint Onlineは、従来の環境にあった『掲示板』機能と、申請書類などを保管する『データ ライブラリ』機能を移行したところから活用しています。しかし、移行当初に“Must”としていたものは完了しましたが、SharePointが多機能なゆえ、すでに社内から、さまざまな“Want”が上がっています。こういった意識の改革を実現するのも大きな成果と言えます」(伊藤園の青柳氏/同上)
「キャンペーンや新商品の情報、努力目標などをエリアマネージャーから各店舗へメールで連絡しても、一方通行のコミュニケーションに陥ってしまうジレンマがありました。SharePointを活用すれば、進捗管理なども含めて、店舗とエリアマネージャーの間で双方向のコミュニケーションが実現する仕組みにできます」(タリーズコーヒーの橋本氏/同上)
今後、Skype for Business(Lync Onlineより、4月14日に改称)による、遠隔地を結ぶWeb会議やテレワーク支援、さらにどこでも業務を進行できるスマートデバイスの有効なビジネス活用やBCP対策を推進できる効果も期待する。
「自由に“人と情報”にアクセスできるようになれば、各段に便利に、ビジネスのスピードも上がります。グループ全体を支える情報共有基盤として、実現したい項目、検討すべき項目はまだ数多くありますが、今後の運用を通じてOffice 365の利点をさらに引き出し、『チーム伊藤園』のコミュニケーションへ、より多くの貢献を果たしたいと思います」(伊藤園の椎橋氏/同上)
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