スマホの写真とクラウド自動バックアップの悩ましい関係:半径300メートルのIT(2/2 ページ)
スマホのカメラで撮影した写真――撮影者しか持っていないワン&オンリーなデータです。万が一の消失を考えればクラウドへの自動バックアップはありがたい機能ですが、情報システム部門にとっては厄介な話かもしれません。
個人スマホの“勝手な利用”は止められない
名刺、オフィス文書、ホワイトボード上の会議メモ、経費精算で使うレシートなどを撮影したスマホ。それって誰のものでしょうか? おそらくその多くは個人所有のスマホです。ということは、それら「写真データ」は個人のクラウドストレージに自動的に保存されていきます。
もちろん、クラウドストレージのデータはユーザー本人しか見られないことが前提になっています。しかし、何かの拍子にアクセス制限が変更され、本人も気付かないうちにデータが全世界に向けて公開されるリスクもはらむわけです。
もちろん自動バックアップを「しない」という設定も可能です。しかし、それは万が一のデータ消失というリスクとトレードオフ。それに、情報システム部門が個人所有のスマホに対して「バックアップするな」という指示を出すのも難しい。となると、「個人のスマホを業務では使わない」というルールを徹底するしかありません。
情報漏えい対策として執務エリアに個人のスマホを持ちこむことを制限する企業もあります。しかし、スマホ活用で業務効率の改善が期待できる今、前時代的な対策にも思えます。スマホ持ち込みのルールを厳密にしたい(一人)情シス的立場と、便利なものは活用したいという従業員的立場のはざまに立っている読者も多いのではないでしょうか。今のところ、これをズバリ解決する方法は思い浮かびません。
利便性とリスクはバランスが重要です。今回の話にしても、その現場ごとに「リスクを取るか、利便性を取るか」の選択になります。そのためにも情報システム部門は、触りもせずに全否定するのではなく、「その技術が裏でどのようなことをしているのか」を理解しなくてはならないでしょう。
著者紹介:宮田健(みやた・たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
筆者より:
2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。
これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。みなさんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。
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