「われわれはバージョンアップ部隊ではない」 旭硝子“攻めの情シス”その手法:基盤システムをクラウド化、AWSで変革(3/3 ページ)
ガラス大手の旭硝子が、メインフレーム/オンプレミスベースの業務基盤をAWSでクラウド化した。「オンプレミスしか考えていなかった」と思い込んでいた同社が「クラウドにする」「バージョンアップ部隊ではなく、われわれこそが業務改革の担い手だ」と考えを一転した転機は何だったのか。
効果や成果:AWSで“楽”になった
2014年5月頃よりコンサルを入れて監査を実施し、AWSで行くと決定。そこから3カ月後、2014年8月にAWSプレ稼働を開始した。本格稼働は2016年を予定する。
なにより「楽になった」(旭硝子の浅沼氏)。プレ稼働後、ロードバランサを入れるなど構成カスタマイズも実施した。オンプレ環境なら1000万円単位のコストが追加発生するところだが、AWSは構成をすぐ変えられる。こんな柔軟さの効果も実感した。
もう1つ、コンサルサービス「AWSプロフェッショナルサービス」に積極的に入ってもらったのが順調に進んでいる大きな理由という。
クラウドサービスは新技術の機能が矢継ぎ早にリリースされるため、ノウハウの会得が重要。常に最新情報を追い続けている必要もある。AWSのコンサルならば、少なくともAWS機能の“最新”を把握している。テクノロジーアップデートは月に1回ほどある。「それを教えてくれる人が近くにいる安心感。AWSを使いこなせているかというとまだまだですが、継続的な機能アップデート対応、そしてサンプルのコードがあるならば一気に開発スピードを高まります。こういった安心感や心地よいスピード感も、導入後に改めて実感できました」(旭硝子の浅沼氏)
AWSを入れると、逃げられない。「これはいい意味で」だという。「業務パッケージがベンダーロックインされるのは問題と思いますが、AWSのようなプラットフォームはどうでしょう。適切なシステムで構成するだけなので……という考え方ですね」(旭硝子の三堀氏)
「オンプレと比べた5年後もきちんと使えるかが心配でしたが、今は大丈夫と確信しています」(浅沼氏)。同規模の基幹システムはまだある。2019年までに8割、2020年にはほぼすべてのシステムをクラウド基盤へ移行させる計画だ。
グローバル規模でビジネスを展開する企業は、統一された運用ポリシーに基づいたITガバナンスの策定がより重要になる。IT基盤が共通化されていなければ、意思決定や業務改革のスピードアップは望めないばかりか、トラブルの要因にもなり得る。
この点、旭硝子のIT部門はこれまでの伝統的体制を振り返り、新体制への移行で壁となる“現状把握”と“共通基盤の策定”を解決。AWSおよびAWSのコンサルサービスをうまく活用することで、継続的な共通基盤をクラウド環境で運用する体制を整えた。これまでの保守の情シスから“攻め”の情シスへ、クラウド化を機会に変われた。「そうはいってもいろいろと事情が……」。そんな保守姿勢から“攻め”を夢見る情シスが参考になる、企業クラウド移行計画の好例といえそうだ。
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クラウド化の最適解は、企業ごとに異なる。そのため、パブリッククラウドサービスベンダーは、個々の企業の事情や状況に合わせて適切なクラウドサービスの選択肢を提言する“コンサルサービス”にも力を入れている。AWSの技術領域に特化したコンサルサービス「AWSプロフェッショナルサービス」は、何をしてくれるのか。 - なぜ日本企業はAWSを採用するのか
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