新たなクラウド戦略を打ち出した富士通の思惑:Weekly Memo(1/2 ページ)
富士通がオープン技術を採用した新たなクラウドサービスを打ち出した。グローバル市場を舞台に、果たして先行する競合ベンダーを追撃することができるか。
オープン技術を採用したパブリッククラウドサービスを投入
富士通が5月12日、新たなパブリッククラウドサービス「K5」をはじめ、プライベートクラウド構築用のソフトウェアや垂直統合型商品「PRIMEFLEX for Cloud」、マルチクラウド統合管理商品、マルチクラウドとの接続サービスを発表した。
最大の注目点は、IaaS構築用ソフト「OpenStack」やPaaS構築用ソフト「Cloud Foundry」といったオープンソースソフト(OSS)に基づくオープン技術を採用したことだ。
その理由について同社の遠藤明執行役員デジタルビジネスプラットフォーム事業本部本部長は、「当社はオープンソースコミュニティに積極的に参加し貢献してきており、世界中の開発者の成果を迅速に取り込むことができる。また、同じオープン技術を採用した他社のクラウドとの互換性も確保できる」ことを挙げた。
遠藤氏は、OpenStackやCloud Foundryを、今回発表したパブリッククラウドとプライベートクラウドの共通技術として採用したことにより、「クラウド上で構築したアプリケーション資産やデータの相互移行、統合運用を行えるようにした」ことも強調。さらに、マルチクラウド統合管理機能や接続サービスにより、顧客企業のオンプレミス環境や他社のクラウドも含めた統合運用もできると説明した。(図1参照)
同社が今回、オープン技術を採用したパブリッククラウドサービスとして打ち出したK5の特長については、次の4つを挙げている。
1つ目は「富士通の知見・ノウハウの活用」。同社のSEが培ってきたSIの知見を形式知化して提供し、高効率、高品質、高信頼なインテグレーションを容易に実現するという。2つ目は「既存IT資産のTCO削減とビジネス価値向上」。新たなシステムを開発する際、現行のシステムを生かしながら開発効率を迅速化する手法やAPIを利用することで、運用コスト削減やビジネススピードへの対応を実現するとしている。
3つ目は「インフラ構築作業を大幅に短縮」。サービスレベル契約(SLA)要件やテンプレートを選択するだけで最適な構成と環境設定を容易に実現。検証済みの最適なインフラ環境を数十分で自動設計・配備できるという。4つ目は「新事業領域へのタイムリーな参入」。アジャイル型の開発実行環境を提供。アプリケーションを簡単にアウケールアウトしたり、テストの最小化を実現するとしている。
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