Windows 10のエディションにみるデバイス事情:Enterprise IT Kaleidoscope(2/3 ページ)
ついにWindows 10のエディションも発表され、夏のリリースに向けて着々と準備が進んでいる。今回はWindows 10の各エディションと今後のコンピューティング環境を紐解いてみたい。
モバイルではどうなる?
Windows 10 MobileではWindowsのデスクトップUIが搭載されなかったり、デスクトップアプリケーション(Win32ベースのアプリケーション)が動作しなかったりするため、基本的にはスマートフォン向けOSという位置付けであるようだ。一方、Windows 10がタブレットまでもカバーするのは、ARMプロセッサ以外にx86/x64プロセッサを搭載する製品があることを意識したのだろう。
その理由は、Windows 8/8.1で製品ラインアップにARMプロセッサベースのWindows RTが混在していたためだ。Windows RTは既存のデスクトップアプリケーションが動作せず、ほとんど普及しなかった。デスクトップアプリケーションが数多く残る現状では、既存のアプリケーションを動かせるx86/x64プロセッサを使ったタブレットが市場に受け入れられる、とみられている。
Windows 8が開発された頃のx86/x64プロセッサは電力消費が高く、モバイルプロセッサとして優れているとは言えなかった。しかし、Intelの最新AtomプロセッサやCore Mプロセッサを見てみると、ARMプロセッサに匹敵する低消費電力性を実現しており、LTEなどのデータ通信モジュールもそろえてきた。AndroidスマートフォンやタブレットなどでもAtomプロセッサの採用が増えつつある。
このようなハードウェア環境の変化により、今後は8インチ以上のタブレットでもx86/x64プロセッサが中心になるだろう。しかし、8インチ以下の画面サイズが小さい「ファブレット」(スマートフォンとタブレットが融合した製品)などでは引き続きARMプロセッサが主流になるかもしれない。7〜8インチの製品市場はARMプロセッサとx86プロセッサが混在していくと思われる。
今後Windows 10の普及が進んで、デスクトップアプリケーションからUniversal Windows Platform Apps(UWPA)へシフトすれば、デスクトップUIを持たないARMプロセッサ版のWindows 10がタブレットからノートPCにまで使われるようになる可能性もある。既存のデスクトップアプリケーションの多くがUWPAに移行するには、4、5年はかかるだろう。
企業向けのWindows 10 Enterprise Mobileは、Windows 10 Mobileに企業で必要なセキュリティ機能(MDMなど)やアップデート機能などを取り込んだエディションだ。Windows 10 Mobile/Enterprise Mobileは、ボリュームライセンスに基づいて提供される。
また、Windows 10 Mobile/Enterprise Mobileのアップデートは、Windows Updateによって一括で行われる。Androidのように通信会社やメーカーなどが個々にアップデートするようなことはなく、各メーカーから販売された製品がほぼ同時にアップデートされるだろう。つまり、アップデートが行われずにセキュリティ問題がそのまま放置されるような事態にはならない。なお、Windows 10 Enterprise Mobileではアップデートをどのように受け入れるのかといった管理を企業側で行える。
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