テレビ朝日が見据える次世代テレビ ビッグデータは「何」を変えるのか(2/3 ページ)
身近なテレビもクラウドで変革していく。クラウドを軸にしたビッグデータ分析基盤によって、テレビ朝日は近未来のテレビのあり方をどう描いているのだろうか。テレビ局のIT×ビッグデータ活用の意図とポイントを聞いた。
「LINK ID」と命名されたこの仕組みで発行されたCookie数は累計で1400万超。その分析を通じ、1週間で約100万ユニークユーザーの存在が確認されているという。
LINK IDにより収集されたログは、「LINK:s」と呼ぶ分析基盤に取り込まれ、さまざまなかたちに加工される。同システムは「リアルタイム番組連携機能」や「リアルタイム高速集計機能」、「視聴情報ビッグデータ管理機能」、「SNS連携機能」などを備えている。
LINK:sによるビッグデータ活用を本格化させたのは2年前(2013年)のこと。その分析基盤に、AWS上で大量データの高速解析を実現する「Amazon Elastic MapReduce(Amazon EMR)」とHadoop上のデータウェアハウス(DWH)構築環境「Apache Hive」を用いている。松下氏は「当初は利用ログが未確定なこともあり、プログラミングベースの環境で十分との考えがありました。その上で、運用コストと汎用性の高さを要件に選定した結果、両者の組み合わせが最適との結論に至ったのです」とその選定理由を述べる。
運用が進むにつれ、新たな課題も浮上した。代表的なものが、より多様なリポート出力ニーズへの対応である。当時、データ分析に関するシステム担当者は松下氏を含めてわずか2人であった。要望を個別対応していくには現実的でなく、迅速を望む現場のニーズに応える何らかの策が求められるようになった。
そこで松下氏が下した決断は、使い勝手の高いBI(Business Intelligence)ツールの採用で、現場に近いスタッフ自身で行えるリポート出力機能を用意することだった。取り組み当初からの経験と、データ活用が社内に広がる中で、利用頻度の高い情報、必要とされるログの傾向も見えてきたからだ。
こうした方針のもと、テレビ朝日は2014年に分析基盤を刷新し、BIツール「Tableau」を新たに導入。あわせてTableauとの連携を考慮し、Amazon EMRをクラウドDWHの「Amazon Redshift」に置き換えた。
「Amazon RedshiftはTableauへのデータ出力が容易に行え、すでに連携実績も豊富に存在しました。加えて、PostgreSQL互換のSQLが使えるなど、我々でも扱いやすいこともメリットと判断しました」(松下氏)
システム開発に要した期間は約3か月。かなり短期で行えた。その過程で、テーブル構成の再設計やデータのクレンジング、マスターデータなどの追加作業も実施した。できあがった新たな分析基盤は、分析ニーズのさらなる多様化を視野に、ビジュアル面の追加開発にも対応させている。
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