テレビ朝日が見据える次世代テレビ ビッグデータは「何」を変えるのか(3/3 ページ)
身近なテレビもクラウドで変革していく。クラウドを軸にしたビッグデータ分析基盤によって、テレビ朝日は近未来のテレビのあり方をどう描いているのだろうか。テレビ局のIT×ビッグデータ活用の意図とポイントを聞いた。
テレビの新しい可能性を開拓するために
データ分析を通じ、現在、同社が力を入れているのが「レコメンド」と「O2Oトラフィック誘導」、「マーケティング高度化」の3つだ。
レコメンドとは、文字通り視聴者が好みそうな番組をもっと効果的に提案する機能を示す。「次世代のスマートテレビと位置付けられる“ハイブリッドキャスト”では、HTML5対応ブラウザに放送とインターネットの双方のコンテンツを連携して表示できます。これを利用すれば、視聴者の過去のログなどをもとにしたオリジナルランキングを提供でき、個々に番組の視聴を促せるようになります」と松下氏はITと融合した新たなテレビのあり方とその効果に期待を寄せる。
同社は2015年2月16日から20日間にわたり、ハイブリッドキャスト向けのレコメンドサービスを試験的に提供した。これに十分な手応えを感じたという。とりわけ松下氏が評価するのが、ハイブリッドキャスト用テレビとスマートフォンとのペアリングによって、テレビの前に誰が座っているのかを推察できるようになったこと。つまり「世帯単位ではなく、個々の視聴者単位で放送を含めたサービス提供の基盤が整備されるのです」(松下氏)。テレビ局にとってこのインパクトは非常に大きいという。
次にO2O(Online to Offline)トラフィック誘導とは、テレビCMとインターネットを組み合わせた新たなプロモーション手段を示す。例えば、CMが放送された番組を見たであろう視聴者をログ解析によって洗い出し、視聴者をインターネットのプロモーションを介して、広告主のWebサイトに誘導するといったイメージなようだ。「より効果的なマーケティング手法として広告主の関心も高い」と松下氏は述べる。
マーケティング高度化策として最近始めたのが、番組で紹介した店や商品をタイムライン表示するスマホアプリ「テレ朝アプリ」である。今後、テレビの音声を拾うと(番組をオンタイムで見ているということになるので)ポイントが貯まる仕組みの実現などに取り組むという。
テレビの新しい可能性を開拓すべく、一連のチャレンジの活動基盤となっているビッグデータの分析環境だが、現状はまだ発展の途上だという。「来年2016年度にまた変更が加わる可能性もあります。ただし、その際にもAWSのクラウド基盤を基本に活用しつつ、少人数で回せるものにする方針に変わりはありません」(松下氏)。
インターネットにより大きく変貌を遂げつつある放送局。その進化の一翼をクラウドサービスが担っている。
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