第2回 マイナンバー対応、税理士業務の現状と課題を知る:税理士目線で提案する「中小企業のマイナンバー対策」(1/2 ページ)
マイナンバー制度は全ての企業、さらにその委託先──例えば税理士の業務にも深く関係する。中小企業のマイナンバー対応は「税理士への委託を考慮した対策」が必要だ。2回目は、税理士が企業に対してどう考えているかを説明する。
講師:中尾健一(なかお・けんいち)氏
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役。1982年日本デジタル研究所(JDL)入社。日本の会計事務所のコンピュータ化を30年以上に渡りソフトウェア企画面から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システムを企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。2015年4月に発足したクラウドマイナンバー事業における「マイナンバーエバンジェリスト」として、中小企業の財務を担う税理士の視点から、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。
税理士業務の現状「中小企業の税務申告は、税理士が委託を受けて行っている」
税理士の主業務に「税務申告」があります。ほとんどの中小企業や個人事業主が法人税や所得税、消費税などの税務申告を税理士に委託しています。
申告の前提になる会計業務についても、税理士が関わっていることが一般的です。中小企業が会計業務を税理士事務所に委託して記帳代行するケースから、中小企業が会計ソフトにデータ入力し、税理士事務所がそのデータを監査して、試算表など月次の資料を作成するケースもあります。いずれにせよ、税務申告時には税理士事務所が会計の総まとめとなる決算報告書を作成し、決算報告書の損益をベースに申告書を作成しています。
毎月の会計業務から中小企業に関わる税理士事務所は、顧問先の企業との付き合いも深く、普段から税務に関わる相談はもちろん、経営に関する相談も寄せられ、さまざまな対応を行っています。税理士はもちろん、所員の方も普段から業務に追われ、忙しい日々を送っているのが税理士事務所の実情です。
中でも、一般会社員を中心とする給与所得者の年末調整業務が本格化する12月から、年末調整関連の書類の作成や提出が集中する翌年の1月、個人事業主の所得税の確定申告時期となる2月から3月、そして3月決算法人の申告業務が集中する5月までの約半年間、税理士業界では「繁忙期」と呼ぶ時期が毎年やってきます。
マイナンバー制度では“新たに”厳しい安全管理が求められますが、個人番号の利用や提出が必要となる年末調整業務や所得税確定申告は、この繁忙期の業務でもあります。
年末調整業務や所得税確定申告業務の実際
年末調整や所得税に関する業務の特徴は、大量の処理が短期間に集中することです。
年末調整では“顧問先の中小企業数×従業員数”の計算処理、書類作成などの処理を年間最後の12月の給与(または賞与)までの短期間で行い、1月には年末調整などの結果を示す書類として源泉徴収票等法定調書の作成・提出をすることになります。この時期、税理士事務所の多くはパートタイマーを雇い入れなければ追いつかないほどで、所員との役割分担のもと、全員で業務にあたるのが一般的です。
所得税の場合も、個人事業主の1年間の取引記録(売上の記録や領収書など)から会計データを作成し、個人用の決算書である青色申告決算書(白色申告の場合は収支内訳書)を作成し、所得税の確定申告書を作成します。取引記録の収集を1月から開始して、2月から3月にかけて決算書および確定申告書の作成・提出まで、短い期間で顧問先である個人事業主の所得税を処理しなければなりません。所得税の業務も、事務所全員で業務に対応していきます。
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