人工知能(AI)の“ターミネーター化”防止目的の37の研究にFLIが総額700万ドル提供
AIの安全性を研究する非営利団体Future of Life Instituteが、選抜した37の研究チームに総額700万ドルを提供する。例えばAIに態度から相手の好みを推測する人間のような能力を与える研究などが選ばれた。
主に人工知能(AI)の安全性について研究する非営利の研究組織Future of Life Institute(FLI)は7月2日(現地時間)、37の関連チームに米Teslaや米SpaceXの創業者である起業家のイーロン・マスク氏からの寄付金を提供すると発表した。
マスク氏は今年1月、FLIに1000万ドル(約12億円)を寄付すると発表した。FLIはこの寄付金から700万ドルを研究チームの支援に使う。
FLIは、人にやさしいAIの開発をテーマに研究を募集し、応募してきた世界中の300以上のチームから37チームを選んだ。全チームのリストはこちら。残念ながら日本のチームはない。
例えば34万2727ドルを獲得したカリフォルニア大学バークリー校のスチュアート・ラッセル教授のチームは、AIに人間を観察してその人間の望みを推測するという、人間に備わっている能力を与えるための研究を行う。
25万5160ドルを獲得したスタンフォード大学のパーシー・リャン助教授のチームは、従来の機械学習の基礎となっている統計学的学習理論に代わる次世代の安全なAIシステムのための理論を構築するという。例えば現在の自動運転システムはデータを収集した状況では問題なく稼働するが、全く新しい状況(例えば災害など)には適応できない。こうした問題を解決するのが目的だ。
FLIはSkypeの共同創業者ジャーン・タリン氏やと米マサチューセッツ工科大学のマックス・テグマーク教授らが立ち上げた研究組織。マスク氏は、スティーブン・ホーキンス博士やスチュワート・ラッセル教授らとともにFLIの顧問として名を連ねている。
関連記事
- Facebookの技術で“思考の直接共有”を可能にする──ザッカーバーグCEO
Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOが恒例の「Q&A with Mark」をオンラインで開催し、スティーブン・ホーキング博士や俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏の質問に答えた。 - 産総研「人工知能研究センター」設立 人間と相互理解できる人工知能の実現へ
産総研が「人工知能研究センター」を設立。人間と相互に理解しあえる人工知能の実現を目指す基礎研究と、成果を実社会に適用する人工知能フレームワークの研究開発を行う。 - Googleの人工知能「DQN」、アタリゲームで人間よりハイスコア叩き出す
Google傘下の人工知能企業DeepMindが、ブロック崩しなどのビデオゲームのルールをほぼゼロから学習し、人間よりハイスコアを獲得するまでに成長する人工知能アルゴリズム「DQN」に関する論文をNatureで発表した。 - 人工知能の“ターミネーター化”を防ぐ研究にイーロン・マスク氏が1000万ドル寄付
TeslaやSpaceXの創業者、イーロン・マスク氏が、人工知能(AI)を人間にとって安全で役立つものにするための研究を行っている非営利組織FLIに1000万ドル(約12億円)寄付した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.