“攻めのIT”には何が必要か 「HCMクラウド事業」を推進するオラクルの意図(2/2 ページ)
オラクルがクラウド型人事アプリケーション「Oracle HCM Cloud」の機能拡張を発表。攻めのITには“次世代型の人材”が必要。ソーシャルも評価する概念を取り入れた、新時代の人事・人材戦略のあり方を日本市場でも推進していく。
次世代の人材管理・人事戦略に必要な、3つのポイント
- 事実に基づいた意思決定ができること
- 社員のコンディションへの配慮を行うこと
- 隠れた優秀な人材の発掘や維持を行うこと
ビッグデータやIoTなどによって「事実の情報」が膨大に増え、集まる状況にある。これを人事の「未来予測」に使う。誰を採用するか、誰が辞めそうか、事業のキーパーソンの後継者はいるか。将来起こりえることを予測して人事戦略を立てる基盤を提供する。ここが(1)のポイントとなる。
例えば、プロジェクトのキーパーソンである人材に「急に辞めてられてしまう」と、大きな損害になる。HCM Cloudによって「辞められないようにする」にはどう対処すべきかをシミュレーションできる。給与体系、給与前年比の伸び率、役職、等級、勤務時間、休暇取得数、疾病からの経過時間など多くの人事情報と取得データから「What-If分析」を行い、前もって対策が取れる。
(2)は新たに追加した「Work Life Solutions」ツールを軸に実現する。従業員にとって自身の成長と仕事の成果を「私生活」とキャリアの目標を連携させながら実現するツールとなる。企業には、優秀な人材を自社に引きつけ、維持していくための仕組みとして機能する。
例えば従業員が装着するIoT/ウエアラブルデバイスなどで得た生体情報とリンクさせ、従業員の健康状態の管理やモチベーション向上につなげる「My Wellness」機能は、これまでの人事給与システムの概念にはなかった試みだ。歩数をチームで競うといったゲーミフィケーション的アプローチで帰属意識を高める効果のほか、毎日終電帰りでここでの活動力が日に日に落ちているならば、もしかして体調が悪いかもしれないので、会社としてケアを──といった予測から、管理側もしかるべき対処ができる。
(3)の「隠れた優秀な人材」も、これまでの評価システムでは数値として表れにくかった。成績や目標こそ満たしていないかもしれないが、「それは彼にしか分からない」など、自社の成長につながる重要なノウハウを持つ従業員に対し、適正な評価システムの1つになり得る。“実は会社にとって必要な人材である”ことを、肌感だけでなく、データとして浮かび上がらせられる。
例えば、個人SNSとの連携するWork Life Solutionsの「My Reputation」機能。これで、就業時の成果以外に、SNSでの個人的影響力やスキルを評価項目として活用できるようにする。対外的なSNSでの情報発信力や拡散力を知ることで隠れた能力を見いだし、企業の新たなプロジェクトへの起用などに役立てることが可能になる。他方、不適切な書き込みも認知できるため、企業としてのコンプライアンスの強化に貢献する効果もある。
それが嫌な人もいるだろう。連携の有無は当然、従業員本人の意思決定のもとで行う。ここでのポイントは、個人の隠れた能力や心理状況など、従来のシステムでは収集し得なかった情報もデータとして蓄積でき、人事評価に生かせるようにする新たな仕組みを用意できるということだ。
「人事部門は、自社の成長に必要な従業員の確保を軸に、新しいIT技術や環境に合わせて既存の人事システムを融合していく必要がある。日本の経営層へ、自社の“やりたいこと”に対し、人材や仕組み、情報は足りていますか? がまず伝えたいメッセージ。APIを公開していることで、お客様がバラバラにやらなくても、人事を中心に、セールスクラウドを中心に、いろんなものを中心にしながらつないでいけるのがオラクルの一番の強み。グローバルではHCM=Oracleと当たり前になっているように、人事給与システムが別途稼働している日本企業にも、クラウドによるシステム転換の観点で伸びしろが多くある。日本でもIT人事・人材戦略の考え方のHCMクラウドは大きく成長すると見込んでいる」(日本オラクル 専務執行役員クラウド・アプリケーション事業統括の下垣典弘氏)
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