「このままだと企業の4割が消える」――経産省が“攻めのIT”を後押しするワケ(前編):“戦略的IT活用”が生き残りのカギ(2/2 ページ)
攻めのITに取り組む企業を選出したり、企業のIT投資についての調査を行うなど、経済産業省が「攻めのIT」を推進しようと活発に動いている。国として、今「攻めのIT」を推進するのはなぜなのか。経産省の担当者に聞いてみた。
ROEの高い企業は経営トップがITを重要視
実際、「攻めのIT経営銘柄」選定のための調査では、収益力のある企業ほど経営トップがITについて高い関心を持っているという特徴が表れた。調査に回答した210社を3年間の平均ROE(自己資本利益率=企業の収益性を測る指標)で分類したところ、ROE8%以上の企業はそうでない企業の2倍以上、経営トップがITに関心や知見があるという結果が出たそうだ(関連リンク)。
経営トップの関心以外にも、事業部門にIT人材を配置しているか、株主に向けてITに関する取り組みを説明しているかといった項目でも有意な差が出ている。また、収益力の高い企業は、早くから攻めのITに取り組んでいることも分かった。3年間の平均ROEが業種平均を超える企業の6割以上が、攻めのIT経営を5年以上前から始めていると回答したのだ。
変化の時代はチャンスでもある。特に現在は、アベノミクスの影響で利益率が向上し、余裕資金をどこに投資するのかが経営者の関心事になりつつある。課題を抱えている企業こそ伸びしろがあるので、今からでも攻めのITに取り組んで成長してほしい、というのが経産省の主張だ。
経産省によると、5月の「攻めのIT経営銘柄」の公表後、選定のための調査への回答を見送った企業を中心に、多数の企業から問い合わせが寄せられたため、分析結果の公表を決めたという。企業のほかにも、海外を含む複数の機関投資家からも問い合わせが来ているとのことで、その注目度の高さがうかがえる。(後編へ続く)
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