対人スキルに優れたプロマネが使いこなす“7つ道具”:プロマネ1年生の教科書(2/2 ページ)
プロマネは「人間に関するプロフェッショナル」といわれており、他者とうまく交流できる行動や考え方、スキルを持つことが、優秀なプロマネに近づくための要件と言えます。こうした資質は大きく7種類に分類できます。
4:仕事や関わり方を調整するスキル
プロマネは各メンバーに仕事を割り振るという役割があります。仕事のアサインや人事権について、全て決められるほどの権限をもったプロマネは非常に少ないですが、メンバーにモチベーション高く仕事に取り組んでほしいと思っているプロマネは多いはず。
また、仕事を通じてメンバーを成長させるのもプロマネの仕事です。このプロジェクトでどこまで仕事ができるようになって欲しいか、何を経験させればよいか、ということを踏まえた上で仕事を与えたり、コミュニケーションを考えられるとなおよし。プロマネに与えられた権限内で、どのような工夫ができるかを知っておくとよいです。
5:ステークホルダーやメンバーと交渉するスキル
プロジェクトの中では、ステークホルダーやメンバーとのさまざまな調整事など、話し合って状況整理や説得をする場面はとても多いものです。
実際に活用するスキルは、ネゴシエーション(交渉)だけではなく、状況に応じてファシリテーションやプレゼンテーションなどとの使い分けが必要になるでしょう。スキルを活用する際は一定のルールがあるので、それに基づいて臨機応変に対応する必要があります。
6:意思決定を行い、守らせるスキル
自らが決めたことをどう守っていくか、そしてその内容をどうやってメンバーに守らせるか、プロマネの覚悟と責任が問われる重要な要素です。最善の結果につながるよう、意思を貫く方法を把握しましょう。
7:自身の考え方や行動を支える土台を作るスキル
目の前のプロジェクトやチーム自体だけでなく、自分が今後どう成長していきたいのか、どんなふうにキャリアを描いていきたいのか、事あるごとに考えておくのが大切です。成長するプロマネと成長しないプロマネの違いを把握し、自分のことも大切にしながらビジョンを立てられるプロマネに人はついていきます。
スキルの内容を知り、自分に当てはめることが第一歩
7つのスキルを挙げましたが、いかがでしょうか。既に実践できているスキルもあれば、これから身につけるスキルもあると思います。前回の記事で触れたように、この全てを自分一人でカバーすることもありません。自分に足りないスキルについて、同僚や部下に協力を求めるのもアリです。
スキルを習得しようとするなら“一瞬で”というわけにはいきません。できそうな部分から試し、その範囲を徐々に広げていくようにするとうまくいくでしょう。中長期的な取り組みになるので、相応の覚悟が必要です。
こうしたスキルがあれば、必ずプロジェクトがうまくいくというわけではありません。しかし、それぞれのスキルを使いこなすことで、プロジェクトが大きく改善するケースも多いのは事実です。まずはスキルの内容を知り、自分に当てはめるところから始めましょう。記事を読んだ後は、“自分の置かれた環境ではどうか”と考えると効果的です。
ちなみに、プロマネには人的要素以外にもさまざまなスキルがあり、PMIがまとめたプロジェクト全般の知識体系を「PMBOK」と言います。より広い知識を学習したい方は「PMI公式サイト」や、PMBOKが学べる研修を調べてみるとよいでしょう。
次回は1つ目のスキル、「柔軟な心を持つスキル」をご紹介します。
著者プロフィール:岩淺こまき
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
- ブログ:「岩淺こまきの『明日の私を強くするビジネス元気ワード』」
- “上司部下のコミュニケーション”に効く前連載「そのひとことを言う前に」はここからどうぞ。
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