セルフサービスBI、導入に失敗しないための準備とは?:「セルフサービスBI」の基礎知識【後編】(2/2 ページ)
業務部門から「セルフサービスBI」を導入してほしいと言われたときに、これまで使ってきた従来型のBIツールを捨て、セルフサービスBIに切り替えるべきか悩む企業は多いが、“二者択一”の問題ではなく、両者を並立させる使い分けが重要なのだという。
「セルフサービス」から「データ・ディスカバリー」へ
セルフサービスBIの市場はここ数年で著しく成長しており、さらなる普及が見込まれる。とはいえ、今後は「セルフサービスBI」という言葉自体がなくなるかもしれない。ガートナーでは近年、セルフサービスBIではなく「データ・ディスカバリーツール」という言葉を使っている。これはデータから有効な知見や洞察を得ることに重点を置く考え方だ。
「“セルフサービス”というと、『IT部門は何もしません、ユーザー部門で勝手にやってください』というネガティブな意味合いにとられてしまうことがありました(笑)。“データ・ディスカバリー”の方が積極的なイメージを持ってもらえますね。データ・ディスカバリーツールはセルフサービスBIツールと同義ではありません。ユーザー部門が自由に使えるという意味では同じですが、より広い概念なのです」(堀内氏)
現在、セルフサービスBIと呼ばれている製品は、一般的に構造化データを見やすいビジュアルで表現する点が特徴だが、データ・ディスカバリーBIの将来像としては、非構造化データも取り込んだうえで、予測モデルの作成や分析方法のレコメンデーション機能など、人の手が必要な作業を自動化する方向への発展が期待できるという。
ただし、そういったツールを導入した全ての企業が理想的な使い方ができるかというと、「多くの場合は難しい」というのが、堀内氏の見方だ。
「誰がデータを分析し、どう活用するかというのは企業の組織や文化によって左右され、数年で変わるのは容易ではありません。例えば、全社横断でマネジャー層全員にセルフサービスBIツールを使わせると決めたなら、そのための教育や評価をきちんとして、社内にデータドリブンな文化を根付かせる気概を持って取り組まないと意味がない。それがうまくできた一部の組織が、ベストプラクティスとして紹介されるようになるでしょう」(堀内氏)
企業の意思決定を支えるBIツールはまだまだ過渡期にあるのが現状だ。業務部門から相談されたときに慌てないために、情報システム部門もBIの最新動向を把握し続ける姿勢が欠かせないだろう。
関連記事
- 特集:「セルフサービスBI」でデータドリブン型企業をつくる
社内の専門家ではなく、業務部門自らがリポート作成やデータを扱う――。ここ数年で「セルフサービスBI」と呼ばれる動きが広がりつつあります。「そもそもセルフサービスBIって何?」「導入するときに気を付けるポイントは?」 本特集ではセルフサービスBIを通じて、“現場自らがデータを分析できる会社”をつくる方法をお伝えします。 - データ分析の注目トレンド、「セルフサービスBI」って何ですか?
昨今、業務部門が情シスに頼らず、自らデータ分析やリポート作成を行う「セルフサービスBI」が注目されている。あらためて「セルフサービスBI」とは何か、そして導入時に気を付けるポイントは何かを専門家に聞いてみた。 - リコーのIT戦略を“攻め”に変えたBIと情報活用の力
リコーがITによる経営・業務革新のための新組織「経営革新本部」を発足し、部門を横断したBIと情報活用の強化を急速に進めている。この背景に、このままでは必要とされなくなるというIT部門の強い危機感があった。 - コールセンターの現場スタッフもBIツールを活用する時代
「スカパー!」のカスタマーセンターに、セルフサービス型BIツール「Qlik Sense」が導入。オペレーターを指揮するスーパーバイザーがサービス向上に使う。 - auショップの販売戦略を支えるモバイルBI 導入の中心となったのは営業部門だった
KDDIのコンシューマ営業と全国のauショップをつなぎ、販売実績をリアルタイムに共有する「Sales Navigator」。1万を超えるユーザーがモバイル環境からアクセスする仕組みは現場の声から生まれた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.