コラボで“攻めのコンテンツ管理”を BoxとIBM、提携拡大の背景(1/2 ページ)
6月にIBMとの提携を発表したBoxが、9月に提携を拡大することを明らかにした。新たにIBMの4サービスと提携することで、企業の“攻めのコンテンツ管理”を支援する。
クラウド型オンラインストレージサービス大手のBoxが、米・サンフランシスコで開催した年次イベント「BoxWorks 2015」でIBMとの提携拡大を発表し、企業向けコンテンツ管理の課題解決に注力する方針を打ち出した。
BoxがIBMとの提携を発表したのは2015年6月のこと。企業向けのクラウド型ファイル共有サービスとして創業したBoxは昨今、エンタープライズコンテンツ管理(以下、ECM)の領域にサービスを拡大しており、IBMとの提携は、ECMのクラウド化を促進するBoxの戦略にとって重要なものとなる。
Boxのグローバルマーケティング担当上級副社長兼エンタープライズ担当ジェネラルマネジャー、ホイットニー・ブック(Whitney Bouck)氏は基調講演で、「ECMは重要なコンテンツとプロセスを管理するシステムとしてずいぶん前に登場した。企業の戦略面で重要な役割を担っているにもかかわらず、10年以上もの間、企業がこれを使いこなせないままになっているのは、ECMが企業の期待を満たせていないため」と問題を指摘する。
“使われるコンテンツ管理ツール”に必要な機能を提携で提供
ブック氏がその最大の理由として挙げるのは、従業員の働き方が変化していることだ。企業向けのモバイル端末は、年72%のペースで増加しており、米国では47%の従業員が机に座らずに仕事をしているという。こうしたモバイルワーカーは、コンテンツがクラウド上にないと、必要なときに情報にアクセスできず、その結果、ECMが使われなくなっていくとブック氏。ECMプロジェクトの50%以上が想定した利用率に達していないという。
これまでBoxは、企業が暗号化鍵を自分たちで管理できるEnterprise Key Managementなどのセキュリティ機能の実装、メタデータを使ったデータ管理の効率化、APIの公開など、企業が必要とする機能を拡充してきた。
こうした取り組みの結果、今やBoxは5万以上の企業や組織に利用されており、Fortune500企業の51%がBoxユーザーとなっている。しかし、企業の規模が大きくなればなるほど、Box単体での利用ではその潜在能力が生きてこないことから、IBMと提携。IBMの各種サービスと連携することで、時代のニーズを満たす新たなECMとコラボレーションの土台となるプラットフォームの提供に踏み切った。
IBM側もBoxと組むことで、ECMのクラウド化やオンプレミスとクラウドのハイブリッドECMのニーズに応えることができる。IBMのECM製品/戦略担当上級副社長のリッチ・ハワース(Rich Howarth)氏は、「機能が魅力的で、自分たちのアプリケーションとの統合性がある」ことからBoxとの提携を決めたとし、両社が組むことで、「顧客が必要とする機能を、確実に提供できるようになる」と強調した。
新たにIBMの4サービスと連携へ
両社は6月の提携で、IBMのメールやSNS製品、ECM、そしてコグニティブコンピューティング技術「Watson Analytics」などとの統合を実現しており、今回のBoxWorksでは、新たに「IBM Content Navigator」「IBM StoredIQ」「IBM Case Manager」「IBM Datacap」の4種のIBM製品と統合することを明らかにした。
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