ITで散見される「責任逃れのサービス」:半径300メートルのIT(2/2 ページ)
Windows XPやServer 2003に続いて来年早々には多くのIEがサポート終了を迎えます。サポート終了の功罪について考えてみたいと思います。
サービス提供側の理論
この件に関して、マイクロソフトのブログが大変興味深い記事を公開しています。
この記事は、上記の通りIE 9以前のバージョンがまもなくサポート切れになるということを伝えています。特に注目なのは、「Webサイトを運営されている皆さまへ」という章です。一部引用します。
たしかに、サポート期間が終了してもIE 8やそれ以前のIEを使用し続けるユーザーは、少ないながらいらっしゃることでしょう。
そういったユーザーのPVや広告のクリック数を失わないようにするために、いままでと変わらない品質のコンテンツを提供しなければという気持ちは理解できます。
しかし、そういった時代遅れのレガシーブラウザを手厚く保護すればするほど、ユーザーは不便を感じず、ブラウザーをバージョンアップしないままサポート期間の切れた安全でないWebブラウザーを使い続けてしまうことでしょう。これはユーザーにとって非常にリスクの高いことです。
これは耳が痛いというサービス提供者も多いはずです。サービス提供側は「古いバージョンを切り捨てると、利用者も困ってしまうだろう」と考え、なるべく古いものもサポート対象としてしまうことが多いのではないでしょうか。しかし、長期的に見るとこれは確かにユーザーに対してもいいことではありません。
以前、とあるテーマパークを運営する企業の講演でこんな話を聞きました。晴れ着を着てきたお客様に対し、スリルライドで袖が絡まったり、水がかかってしまうといけないので「〜のアトラクションはご遠慮ください」という説明を書いた紙を配ろう、それがサービスだと考えたそうです。
ところが、本国の運営担当がこれを聞き烈火のごとく怒りました。「君たちはなんてバカな相談をしているんだ。そういうお客様のために当日だけ案内の人間を増やしたり、ビニールの前掛けを配ることがサービスだ。君たちはクレーム怖さにサービスといって逃げているだけ。それは『責任逃れのサービス』だ」。
上記のブログを読んで、私はこの話を思い出しました。ITにおいても、このような「責任逃れのサービス」になっていないかを振り返る必要があるのではと思います。本当に利用者のことを考えたら、ITのリスクをしっかり伝え、ITを学びながら活用する必要があるでしょう。
この連載をご覧の方は、エンタープライズ系のサービスに携わりながら、他方では利用者であるはずです。「お客様は神様」と考えるのではなく、お客様こそ普通の人。ならば、サービス提供側はお客様をリードし、サービス提供のプロとして正しい方向へ導かなくてはならないと思います。
著者紹介:宮田健(みやた・たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
筆者より:
2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。
これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。みなさんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。
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