米国に見るクリーンエネルギーでのビッグデータ活用と地域振興:ビッグデータ利活用と問題解決のいま(2/4 ページ)
COP21で「パリ協定」が採択され、米国での地球温暖化対策が注目されている。同国におけるクリーンエネルギー分野でのビッグデータを活用した地域経済振興策とはどのようなものか。
景気刺激策と同時並行で進むオープンガバメント/オープンデータ施策
他方で米エネルギー省は、景気刺激策と同時並行で、オープンガバメント/オープンデータ施策を推進してきた。例えば、2011年9月に発表された「第1次オープンガバメント国家行動計画」(関連PDF)で、エネルギー分野が重点領域に掲げられたのを受けてエネルギー省は、一般市民が電力消費データを簡単・安全にダウンロードでき、そのデータを活用することが可能なインタフェースとして「グリーンボタン」を開発した(関連情報)。
さらに同年4月〜5月、連邦政府のアイデア募集のWebプラットフォーム「Challenge.gov」を利用して、オープンイノベーションによる電力データ利活用アプリケーション開発コンテスト「Apps for Energy」を実施した(関連情報)。
米エネルギー省のオープンイノベーションコンテスト「Apps for Energy」(出典:U.S. Department of Energy「Apps for Energy is Open for Submissions、2012年4月)
オースティン市は、これら「グリーンボタン」の成果物を活用しながら、エネルギー・オースティンのWebポータルを介して、一般市民向けに電力消費データおよび関連情報を提供している。
その後、2013年12月に発表された「第2次オープンガバメント国家行動計画」(関連PDF)や、2014年5月に発表された「米国オープンデータ行動計画」(関連PDF)、2015年10月に発表された「第3次オープンガバメント国家行動計画(関連PDF)でも、「グリーンボタン」を始めとするエネルギー省の施策が引き続き中核プロジェクトに位置付けられ、長期エネルギー予測データ、エネルギー生産データなどの拡充を図るとともに、各地域のデータ利活用・産業振興・雇用創出支援施策へと軸足を移しつつある。
地域住民、非営利組織、行政機関、教育・研究機関、民間企業など、さまざまなステークホルダーが関わるオープンガバメント/オープンデータ施策のプライバシー/セキュリティ対策については、本連載第4回で取り上げたように、連邦政府主導で共通の仕組みづくりが進む。その一方、商務省傘下の国立標準技術研究所(NIST)が、2010年9月に「スマートグリッド・サイバーセキュリティのためのガイドライン」(関連PDF)を発表。エネルギー省が2012年5月、「サイバーセキュリティ・リスクマネジメントプロセス(RMP)・ガイドライン」(関連情報)を発表し、2013年1月には電力分野のコンプライアンス基準「NERC CIP Version 5」(関連情報)を発表するなど、業界ルールの標準化も進んでいる。
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