Apple対FBIのiPhoneバックドア攻防は続く──AppleがQ&Aを公開
FBIは「サンバーナーディーノ事件に関する訴訟は犠牲者と正義のためのもの」という声明を発表し、Appleは「このケースは1台のiPhoneあるいは1回の捜査で終わるものではない」として理解を求めるQ&Aページを公開した。
米Appleのティム・クックCEOは2月22日(現地時間)、米連邦裁判所からの米連邦捜査局(FBI)への協力要請を拒否する件について、全従業員にメールを送った。米The Vergeをはじめとする複数のメディアがこのメールの全文を転載した。
クック氏は18日、テロ事件解決のためにiPhoneのセキュリティ機能の一部を無効化するツールをFBIに提供するよう判事から受けた要請に対し、それを拒否して顧客のプライバシーを守るという決意を顧客宛公開書簡で語った。22日の書簡は、これについての社内外の反応を受けたもの。
裁判所命令は、AppleにiPhoneのロックスクリーンのセキュリティ保護機能を無効にする新しいiOSを作り、電子的なパスコードの入力を可能にする機能を追加しろというものだ。
同氏は従業員にこの件に関するサポートを感謝し、「このケースは1台のiPhoneあるいは1回の捜査で終わるものではないので、政府からの命令を受けた際、公表すべきだと判断した。これは、何百万人もの法を守っている人々のデータセキュリティにとっての危機であり、全国民の自由を脅かす危険な先例を設けるものだ」と語った。
クック氏はまた、政府はFBIが拠り所としている「All Writs Act」(全令状法)を無効化すべきとし、国家安全について検討するためのエキスパートによるコミッションを立ち上げるべきだと主張した。
同氏はこの書簡で、顧客向け公開書簡についてのQ&Aページを公開したことも発表した。
このQ&Aには「Appleはなぜ政府の命令を拒否するのか」「Appleは技術的には命令に応じることができるのか(できる)」「Appleはこのケースでだけ使える新OSを作れるのか(流用を防ぐことはできない)」「Appleは過去に政府の命令に従ってiPhoneをアンロックしたことがあるか(ない)」などの項目がある。
また、新OSとツールが必要になったのは、FBIが問題のiPhoneのバックアップでミスを犯したためであることも説明している。
一方のFBIは21日、「サンバーナーディーノ事件についてのコメント」と題した声明文を公開した。「サンバーナーディーノ事件に関する訴訟は(FBIにとって有利な)先例を作るためでも何かしらの主張をするためでもない。これは犠牲者と正義のためのものなのだ。(中略)この罪のない犠牲者を出した事件は、プライバシーと安全という2つの価値をめぐる深刻な問題を生み出した新たなテクノロジーを照らしだすことにもなった。この問題は、そうしたテクノロジーで収益を上げている企業によって解決させるべきではないし、FBIだけに解決させるべきでもない。米国民が決めるものだ」としている。
米非営利調査機関Pew Research Centerの22日の発表によると、1002人への電話インタビューの結果、51%がAppleはFBIにiPhoneアンロックツールを提供すべきだと答えたという。
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