FBIのコーミー長官、「iPhoneのロック解除が必要になったのはミスのせいだけではない」
FBIのジェイムズ・コーミー長官は米連邦下院法務委員会の公聴会で「バックドアが必要になったのはFBIがミスでパスワードを変えたせいではないか?」という質問に対し「ミスはしたが、たとえしなかったとしてもiPhoneのデータを調べるためにツールを要請しただろう」と答えた。
米連邦下院法務委員会が開催中のプライバシーと国家安全保障に関する公聴会に3月1日(現地時間)、米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官と米Appleの法務顧問、ブルース・スウェル氏が出席した。
「THE ENCRYPTION TIGHTROPE: BALANCING AMERICANS' SECURITY AND PRIVACY」と題されたこの公聴会は、米AppleがFBIへの例外的な協力を拒否したことをきっかけに開催されている。25日には米Microsoftの法律顧問であるブラッド・スミス氏が招かれ、「テクノロジーの進歩に合わせて法律も進化させるべきだ」と主張した。
1日の公聴会ではテロ事件解決のカギとなるとFBIが見ている死亡した犯人のiPhone 5cのバックドアをAppleが提供すべきかどうかをめぐってさまざまな質疑応答が行われた。
多くの議員はFBIの行為に否定的で、コーミー氏に厳しい質問を投げかけた。例えばジョン・コニャーズ議員(ミシガン州・民主党)は、FBI(と政府)が国民的な悲劇(サンベルナルディーノでのテロリストによる乱射事件のこと)を法の悪用のために利用しているとしたら、非常に残念だと語った。
コーミー氏は、FBIがバックドアを必要としているのは、誤ってパスワードを変更してしまったからではないかという追求に対し、初めてそのミスを認めた上で、もしミスをしていなくても、iCloudにはバックアップされていなかった可能性のあるデータを調査するために同じことをしただろうと主張した。
コーミー氏の後にiPad Proを携えて登場したスウェル氏に対しても、厳しい質問もあったが、比較的穏やかなやりとりだった。
同氏は、FBIがAppleが暗号化の重要性を主張するのは宣伝のためだとしたことについて、「血が沸騰するほど憤った」と語り「われわれはセキュリティを売りになどしていない。暗号化を宣伝に使ったりしない。これ(暗号化)が正しいことだと信じるから実行している」と語った。
何人かの議員は、自分で使っているiPhoneを掲げながら質問した。ゾーイ・ロフグレン議員(カリフォルニア州・民主党)はスウェル氏に、「FBIはロック解除ツールは1台でしか使わないと主張しているが、他のiPhoneにも応用できるのではないか?」と質問し、スウェル氏は「その通りだ」と答えた。
「今このときも、世界がここで行われている議論を見ていると思う。Appleが我が国で(FBIの要請に)応じるよう強制されたら、世界中のユーザーの安全とセキュリティは守られていると強く約束できなくなるだろう」(スウェル氏)
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