Appleのフェデリギ氏、「FBIが求めるツールを作れば世界中を危険にさらすことになる」
Apple対FBIのロック解除ツールをめぐる論争で、国連がFBIの要求に懸念を表明したことに続き、Appleのクレイグ・フェデリギ上級副社長がWashington Postに寄稿して「FBIが要求するようなツールを一度作ってしまえば、世界中を危険にさらすことになる」と主張した。
米Appleが米連邦捜査局(FBI)の捜査に協力するためにiPhoneのロック解除ツール(バックドア)を提供すべきかどうかをめぐる論争に、国際連合も加わった。国際連合人権高等弁務官であるヨルダンのゼイド・フセイン王子が3月4日(現地時間)、声明文でロック解除ツールは世界中の人々の人権にとって、ネガティブな分岐点になり得るという懸念を表明した。
同氏は「米当局は1つの事件を解決するために、数百万人の人権を脅かす可能性のある“パンドラの箱”を開けようとしている」とし、また「Appleに自社製端末のセキュリティ機能を侵害するソフトウェアを作るよう強要する以外に、(iPhoneの所有者だった死亡した)殺人者に共犯者がいたかどうか調べる方法は多数ある」と主張して米国に慎重な対応を求めた。
また、米Washington Postは6日、Appleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏による「FBIはわれわれが犯罪者より優位に立つためのツールを後退させようとしている」と題した寄稿文を掲載した。
この中でフェデリギ氏は「FBIが求めるようなツールを一度作ってしまえば、(複数のiPhoneに適用したがっていることを彼らもしぶしぶ認めたように)ハッカーや犯罪者がわれわれすべてのプライバシーを攻撃するために悪用できる弱点になってしまう」と主張し、「セキュリティは、先んずることはできても決定的に勝つことはできない永遠に続くレースなのだ。昨日の最高の防御は明日の攻撃には耐えられない。未来のソフトウェア革新は強固な端末セキュリティの基礎があってこそだ。われわれは、混沌を引き起こすために技術を悪用するようなやからに後れを取ってはならない。われわれがスピードをゆるめたり逆行(FBIが求める古いiOSツールを作ること)することは、世界中を危険にさらすことになる」と語った。
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