「Office 365」を激変させる3つのポイント(後編)(1/2 ページ)
「Office 365」の進化の中でも大きな注目を集めているのが分析・予測分野の機能強化だ。後編ではExcelを分析ツールに変える「Power BI」、Office 365上のあらゆる活動履歴を可視化・分析し、必要なリソースをレコメンドする「Delve」についてマイクロソフトに聞いた。
ビッグデータ、人工知能、Business Intelligence――。企業が「どこから手を付けたらいいか分からない」と思いがちな最新のITトレンドを身近なところに引き寄せ、活用を支援するグループウェアがある。クラウド化したマイクロソフトのOfficeスイート「Office 365」だ。
WordやExcel、PowerPointといったおなじみのツールが、ITのトレンド機能と連携することで、Office 365はどんな進化を遂げ、人の働き方はどう変わるのか――。前編に続き、日本マイクロソフトの業務執行役員で、アプリケーション&サービス マーケティング本部本部長を務める越川慎司氏に聞いた。
分析したデータを“素早い意志決定”に役立てるツールが充実
越川氏が「特に経営層の関心が高い」と自信を見せるのが、Office 365の分析・予測分野の機能強化だ。大量のデータを分析し、“素早い意志決定”に役立てるビジネスインテリジェンス(BI)の進化が、近年のOffice 365においては質と量の両面で著しいという。
ビッグデータという言葉が経営層にも身近になってきたことから、企業が社内のデータを集め始めてはいるものの、なかなか活用までには至らないのが現状だと越川氏。こうした背景から、BIツールやAIをビジネスで生かすための提案が企業に響いているという。
マイクロソフトが、この分野でエンタープライズ向けOffice 365のツールとして提供しているのが「Power BI Pro」と「Delve(および、Delve Analytics)」の2つだ。
Excelを分析ツールに変える「Power BI」
Power BIは、Excelを高度な分析システムに変えるツール。これからは専門家がいない企業でもデータ分析のニーズが高まることが予想され、それに対応するツールという位置付けだ。社内に集積されたデータをビジネスに役立つ形に可視化したり、新たな企画に活用したりするのを、使い慣れたExcelで行えるのがポイント。ExcelやAccess、業務システムなどを含むさまざまなソースからデータを取り込み、現場スタッフが自らの視点で集計や分析、結果の共有を行える。
「これまで業界のトップ10企業じゃないとできなかったような分析が、中堅企業でもできるようになります。ある百貨店の方も『現場を知り尽くしたスタッフにデータという武器を持たせることで、勝ち続けられるかもしれない』と期待を寄せています」(越川氏)
社内に集積されたさまざまなデータを使い慣れたExcelのUIを使って分析できる「Power BI」。E5では、1ユーザーあたりのデータ容量が大きく、更新スケジュールも1時間単位で設定できる高機能な有償版「Power BI Pro」(個別で契約した場合1ユーザーあたり1090円/月)を標準で利用できる
こうしたデータ分析は、企業がグローバル化していく上でも役立つという。データは世界で通用する共通言語だからだ。
「グローバルスタンダードの言語として一番有効なのは、実は英語じゃなくて数字なんです。数字が分かれば英語が話せなくてもコミュニケーションできる。海外でビジネスを展開したい企業なら、地域や文化が違っても通用する“数字”が大きな役割を果たすと思います」(越川氏)
ワークスタイル改革のためのBI――「Delve」
「誰が誰と一緒にどんな仕事をしているのか、その仕事をするのに、どのツールをいつ、どれくらい使っているのか」――。「Delve」は、Power BIとは異なる視点を持つ、“ワークスタイル分析エンジン”としてOffice 365に搭載されているツールだ。
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